- 2012.02.13
- 書評
先見性に、心からの敬意
文:菅谷 昭 (医学博士・長野県松本市長)
『「内部被ばく」こうすれば防げる! 放射能を21年測り続けた女性市議からのアドバイス 』 (漢人明子 著)
ジャンル :
#ノンフィクション
「もし放射線を浴びたら、体にどのような影響があるのでしょうか」
「私たちのまちの行政機関では、教育委員会も含め学校給食に関し、『大丈夫だから』と言って、放射能測定などに応じてくれず困っています。あなたの方から声をかけてもらえませんか」
「家には小さな子どもがいるのですが、どのような食べ物を与えたらよいのでしょうか」
「日常生活における内部被ばくの防護策について教えてください」
「国の言っている安全尺度を、本当に信じてよいのでしょうか」
東京電力福島第一原子力発電所の事故発生以来、私のところ(松本市役所)には、このような質問が数多く寄せられており、正直のところ困惑している。私には本来の市民に対する行政サービスをはじめとする公務などが山積しているからである。
それにしても、何故(なにゆえ)にこれほどまで多くの質問が私宛に届くのかについては、主に次の2つの理由からと考えている。
1つは、私がかつてベラルーシ共和国において、チェルノブイリ原発事故後の医療支援活動に関わっていたからであろう。小児の甲状腺ガンの外科治療への関与、汚染地域の当時の様子、更には現在の汚染地の状況等々、日本においても世界においても、このような経験や現地からの情報を持っている人間が他にいないからだと思う。
もう1つは、多くの国民が政府や東電等が繰り出す原子力災害への後手、後手の対応や、不信を招きかねない言動に憤り、もはや国をあまり信用しなくなっていることが挙げられる。
私自身も公務に支障のない範囲で、全職員や市民の理解と協力を得ながら、国民の不安の解消に応えるべく努めているところである。
そんな折、この度出版された漢人明子氏の“「内部被ばく」こうすれば防げる! 放射能を21年間測り続けた女性市議からのアドバイス”の監修を依頼されたのである。
私の専門領域である医学書の監修ならばそれほど問題とならないと思うのであるが、今回のような場合には、実のところ大変悩んだ末にお受けした次第である。
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