友人知人や、作家仲間と話していると、たまに「時代小説って、書くのたいへんじゃない?」と聞かれることがある。
無論、たいへんなのは当たり前だし、そのたいへんさはミステリーを書く時もSFを書く時も同じなのだけれど、その言葉の裏に、時代小説は制約が多くて書きにくそうだとか、様式や決まり事があってお堅いジャンルなのではと誤解しているニュアンスが感じられることがある。
そんな時、僕はこう答える。
「時代小説ほど自由に好きなことが書けるジャンルはないですよ」と。
時代小説がいかに自由か。
これを口で説明することは難しいが、理解することは容易だ。
柴錬の小説を読んでみりゃいいのである。
さて、いきなり「柴錬」と呼んでしまったが、柴田錬三郎先生と自分とでは、天と地どころか大気圏外と地下数千メートルくらいの差があるので、もうこの際、同業者であることは忘れて、一ファンとして敬愛を込めて、後はすべて柴錬と略させてもらう。
この『真田幸村』という小説は、『猿飛佐助』に続く、柴錬立川文庫の二巻目ということになっている。
立川文庫とは何かというと、明治から大正にかけて刊行された講談本のシリーズのことで、猿飛佐助を始めとするお馴染みのキャラクターは、ここから生み出されている。
つまり、柴錬立川文庫とは、その柴錬版ということだ。
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