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場所や時代を越えて想いをつなげていく

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「本の話」編集部

『空色バトン』 (笹生陽子 著)

出典 : #本の話
ジャンル : #小説

――同人誌制作のマン研のお話などを伺っていますと、笹生さんのご経験がきっかけとなってこの物語を書こうと思われたんでしょうか。

笹生   自分自身というよりは近くにいた人たちの話なんです。中高生くらいのときに、当時は同人誌とは言わなかったんですが、そういう活動をしているグループがあって、その後みんなばらばらになり大学行って就職したり結婚したりして、40歳くらいになってまた地元に集まって活動しているというのを、幼馴染から聞いたんです。ほかでも、『聖闘士星矢(セイントセイヤ)』世代の、地方でマンガの同人活動をやっていた人たちが、子育てが終わったあとにまた描きはじめて1冊作ったのをくれたんです。今では編集作業なんかもパソコンでできるし、離れていても原稿を集めやすいですよね。そういう活動を小耳に挟んだり、実際に知っている人がやったりしていたので、それをネタになにか書きたいなと思ったんです。

――『空色バトン』という本のタイトルもそうですが、一話ごとのタイトルも、「サドルブラウンの犬」とか「茜色図鑑」とかすべて色に絡めてあります。タイトルが先にあって、物語を作っていかれたのでしょうか。

笹生   先というよりは、同時ですね。1話目を書き上げた頃、連作の通しタイトルをどうしようかという相談を編集者としていたときに、色バトンというのを知ったんです。ミクシィなどのソーシャルネットワークサービスで、人にリレー式に質問のバトンを渡していく文化があるんですが、色バトンというのは好きな色を言って次の人に渡していくものなんですね。場所や時代も越えて想いをつなげていくのに、空色バトンというのがいいなと思ったんです。各話のタイトルは、「ドクターマーチン」というスポイト式の水彩カラーインクが私の時代に流行っていたので、それを使ったら全部カタカナでかっこいいかなと。でも全部ドクターマーチンの色にすると商品っぽくなってしまうので、空の色に絡めてつけようと思いました。同じ夕陽でもオレンジだったり紫がかってみえたりしますよね。吉野が主人公の3話目が茜色で、その娘が主人公となっている6話目がマゼンタ。親子で同じ夕陽なんだけれど色が違うというのは面白いかなと。

――その6話目のミクちゃんの回で、反発していた母親の意外な一面を知って、自分の未来にも思いをはせるラストが素敵です。

笹生  朝早く目が覚めるようになったり、固有名詞が出てこなくなったりして、歳をとったなあという実感があって、そろそろ次の世代にバトンを渡していく年齢に自分もなってきたんだなという思いがあって書いた作品なんです。

空色バトン
笹生 陽子・著

定価:1260円(税込) 発売日:2011年06月11日

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