自然エネルギーには、太陽光、風力、地熱、潮流、バイオマスなどを利用した多くの発電方法がある。
なかでも風車は、ヨーロッパではドイツを筆頭に、多く導入されている。
カザグルマのデカイの。それに間違いはないが、大きさは……普通のもので、高さ100メートル前後。世界一の風車は現在、ドイツの高さ183メートル、羽長61.5メートルのものだ。その巨大装置が、風の力で電気を起こす。運動エネルギーを電気エネルギーに変えるのだ。
北海道には日本海に面して50基以上建っている風の町もある。ウインド・ファームだ。
世界最大級のウインド・ファームは、イギリス海峡の洋上風力発電所。35平方キロメートルに100基の風車があり、300メガワットの発電容量を持つ。
さらにアメリカ、オレゴン州では敷地面積80平方キロメートル、風車338基、総発電容量845メガワットの風力発電所が2012年夏を目標に建設されている。
とにかく一度見てください。緑の丘に建つ風車は美しく、雄々しく、力強く、見ていて飽きない。もちろん、問題もある。鳥のぶつかるバードストライク、健康被害をもたらすと言われる風切り音、落雷、強風による故障などだ。しかし、解決できないものではない。
『風をつかまえて』は、その風車についての物語だ。
舞台は北海道。日本海に面した過疎化(かそか)が始まり、財政破綻寸前の町。現在、日本の多くの地方に見られる町だ。その町の小さな鉄工所が、町の人たちと協力して町興しのために独自で風車を造り始める。
物語のテーマは「再生」。
町、建物、道路、形あるモノはいずれ壊れる。何より心の支えとなり、信頼できるのは、人との結びつき。阪神・淡路大震災で強く感じたことだ。
「一人ではない」「がんばって」――今回、被災した東北にも、日本だけでなく世界から励ましの言葉が寄せられている。被災者の言葉も力強く再生を誓うものが多い。
人は傷つき生きる希望さえなくすこともある。しかしどんな状況からも立ち上がり、再生することもできる。人はお互いに傷つけあい憎み合っても、いずれ和解し受け入れ認め合う心を持っている。
疲弊(ひへい)した小さな町も、バラバラになった家族も、少しの労わりと思いやりで優しい心が芽生え、協力し合うことが出来る。風車を造るという、1つの目的に向かうことにより、目的を超えた、1つの心が生まれた。
今回の大災害では家族を、友人を失った人も多くいる。家を流され、仕事をなくした人もいる。でも、生きるために力を合わせ必死に耐え、歩もうとしている。
東北の人たちが、「再生」という目的に向かって、心を1つにすることにより、この物語の東間一家のように新たな風をつかまえることを強く強く望みます。
風の吹きつける北の大地にそびえる風車は、巨大で、スマートで、美しく、雄々しく、力強く回る。単なる「発電装置」であるばかりでなく、夢とロマンと未来を運んでほしい。
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