テレビをつけると健康食品のコマーシャルがたいへん目につきます。
健康食品がこんなにもてはやされる理由はどこにあるのでしょうか。
わたしが編集者としてスタートを切ったのは、日本で初めての健康雑誌『壮快』の編集部でした。
それまで、医療・健康情報のほとんどは医師や看護師など、医療関係者のもので、一般の人々は、医療・健康情報を手に入れることができませんでした。
医事評論家という人たちが医療・健康情報を発信していましたが、彼らもほとんどが医師の資格を持っていましたから、医療・健康情報は限られていたといえるでしょう。
『壮快』は、健康な人に健康情報を送るというコンセプトでスタートした雑誌でした。これは画期的な発想だったといまでも思っています。
現在では、いくつもの健康雑誌が新聞の広告欄をにぎわしています。
健康雑誌のおかげで医療情報が一般の人々にも広まりましたし、健康への関心も高まったと思います。それは大きな貢献だったと思うのですが、一方で、道を誤ったのではないかという思いが私にはあります。
創刊当初は、むずかしい医療情報を専門知識のない一般読者にもわかりやすく解説することに苦労したものです。しかし、基本的に医療情報は楽しく、おもしろいものではありません。
そこで、読み物としてのおもしろさを求めて登場したのが体験談です。
さまざまな病気の体験者の話ほど、身につまされ、共感を呼ぶものはありません。そして、その病気を克服した人の話はなお感動的です。体験した人の話ほど、説得力のあるものはありません。
医師や専門家がいくら上手に解説しても、体験者のひとことにはかないません。
いつの間にか健康雑誌は正しい医療情報をわかりやすく伝える雑誌から、読んでおもしろい体験談雑誌へと変貌していったように思います。