書評

担当編集者が語るガリレオ短編の最高峰

文: 別宮 ユリア (文藝局編集部)

『禁断の魔術 ガリレオ8』 (東野圭吾 著)

『禁断の魔術』 (東野圭吾 著)

 東野さんから「スランプだ」という言葉を聞いたのは、2008年5月のことでした。東野さんといえば日本を代表する売れっ子作家。その人がスランプだなんて、「なんの冗談言ってるんですか」と即座に返して、笑って話を流しました。

 その数日後、スランプの真相が分かりました。当時は『ガリレオの苦悩』を制作中だったのですが、短編4編で作っていたところ、東野さんは何としても5編にしたいと、こちらが依頼していないのに新たな1編を書いていて、それが思うようにいかず、体調がおかしくなるほど苦戦していたのです。それでも最後の1編を書き下ろし、『ガリレオの苦悩』として世に出たことは、読者の皆さんもご承知のとおりです。

 それから4年。去年は長編(『真夏の方程式』)だったから、今度はガリレオの短編集を作りましょう、というこちらの悪魔の囁きに応じてくださった東野さんですが、以後いったい何度、呻吟を聞いたことでしょう。

 いわく、「もう駄目、ネタはない」「若いときは一晩寝ればアイデアなんて湧いてきたけど、もう無理」「これ以上どんなに絞っても一滴も出ない、雑巾でいえばカラっカラ」……。

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禁断の魔術東野圭吾

定価:本体660円+税発売日:2015年06月10日