- 2015.03.24
- 書評
ガリレオ最新刊は2冊分のボリューム──シリーズの変遷が垣間見える短篇集
文:千街 晶之 (ミステリ評論家)
『虚像の道化師』 (東野圭吾 著)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
東野圭吾の『虚像の道化師 ガリレオ7』を単行本で既に読んでいたひとは、現在店頭に並んでいる文庫版を見て、「『虚像の道化師』ってこんなに厚い本だったろうか」と意外に感じたかも知れない。そして、手に取ったひとは、目次に七つの作品名が並んでいるのに驚いたことだろう。
そう、文庫版『虚像の道化師』は、もとの単行本の四作品に、『禁断の魔術 ガリレオ8』収録作のうち一つを除く三作品が追加されたヴァージョンなのだ。ガリレオという通称を持つ天才物理学者・湯川学が解き明かした七つの謎を、一冊でたっぷりと楽しめるようになっている。実は、ガリレオ・シリーズのそれまでの短篇集同様、一冊に五篇を収録する予定で書き始められた短篇が、数が増えたため二分冊で刊行された――という事情があったことを考えるなら、当初の構想に近くなったという見方も可能だろう。
物理を中心に幅広い知識を持つ湯川が、旧友で警視庁捜査一課の刑事の草薙俊平から怪事件について相談を持ち込まれ(内海薫刑事がその役割を担当することもある)、超常現象としか思えない謎を解明してゆく――というのがこのシリーズのフォーマットだ。しかし、本書収録の七篇を読んでゆくと、このフォーマットを踏襲した作品と、必ずしもそうではない作品が混在し、ヴァラエティに富んだ短篇集になっていることに気づく。
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