連作集『禁断の魔術』が刊行されたのは2012年の秋です。四作の書き下ろし中短編小説を収録した、著者としても会心の一冊でした。
中でも特に気合いを入れたのが、「猛射つ(うつ)」でした。枚数にして約二百五十枚。中編というべき分量でした。もう少し書き足して長編にしようか、という考えが頭をよぎったこともありました。
ガリレオシリーズはこれまでに長編が三作出ていますが、それらの作品は短編とは意図的に色合いを変えています。科学トリックは控えめにして、人間ドラマをじっくり描くことに傾注しました。『容疑者Xの献身』など、ストーリーに物理学は殆ど無関係です。
その分、短編では、大いに科学トリックを駆使しました。不可解な謎を科学的に解明してこそガリレオ湯川で、このシリーズの本筋はそれであろうと考えているからです。
「猛射つ」も科学トリックが中心の物語です。だから連作集に入れるのが形としてはしっくりくるので、最終的に中編のままで収録されました。ちなみに、『禁断の魔術』という連作集のタイトルは、元々「猛射つ」単体に付けたかったものです。
しかし連作集として刊行した後も、この作品のことは頭から離れませんでした。もっといろいろとできたのではないか、人物を描けたのではないか、面白いストーリーになったのではないか、と。
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