インタビューほか

芥川賞作家・羽田圭介さんが語る、ありのままの日常(前編)

「本の話」編集部

『スクラップ・アンド・ビルド』 (羽田圭介 著)

――あとこんな質問も。テレビ出演での羽田さんは本当の姿ですか? 偽っている部分はありますか?

羽田 それは本当に嘘がないと思います。逆に言うと、あまり嘘をつかないようにしているから、テレビの制作陣はむしろ「盛り上げるためにそこで嘘をついてくれ」と思っている……意外にそんな感じなんですよね。例えば収録前の打ち合わせ段階で「ここでMCの方がこうくるので、羽田さんはこんな感じでやってください。こんなエピソードありますよね?」みたいな感じで言われて、「いや、ないです」って頑なにしゃべらなかったりする。用意された筋書きが自分の感覚と違うと、やっぱり嘘はつきたくないから拒否したりもします。だから自分を作っているという感じはそんなにないですね。

 ただ嘘はつかなくとも、伝わりやすくするために、あえて単純化して伝えることはあるかもしれないですね。例えば私生活を見せてほしいと言われて、筋トレシーンを実際にやって見せることとか。それは確かに自分の生活の中の一部ではあるけど、別に筋トレしかしてないわけじゃない。それどころかあまりやっていない。でも筋トレ以外の他の情報をあえて出さないことでイメージの編集をしているところはあるかもしれないですね。例えば『電車男』が、本当の電車男は最後に暴走したような気持ち悪いやつだという情報を削除することによって、10年前に純愛物語として成立したのと同じように。

――シンプルに日常の質問ですが、毎日何時間くらい寝ていますか? そして羽田さんと言えば筋トレのイメージが定着していますが、忙しい生活の中で、筋トレができないのではないかと心配の声があります(笑)。その辺はいかがでしょうか。

羽田 7時間半くらいは寝ています。確かに、たまにものすごく忙しい日はありますね。例えば3日前などはテレビ収録が23時に終わって、そこから30分くらい打ち合わせをして、タクシーで帰って、翌日の正午からまた収録というスケジュールで、その合間にはメール返信に追われて6時間くらいしか寝られない日はありましたけど。でも6時間というのはサラリーマンの人からしたら普通の睡眠時間ですよね。そもそも睡眠時間が足りない小説家はあまりいないと思います。むしろ時間に関して重要なのは、集中して書ける時間をどれだけ作れるか。だから、ある時期に大事な取材や仕事が立て続けに入ったとしても、何も入らない日は必ず作るようにしています。やはり睡眠時間よりも、集中できる時間をいかに確保するかに気を使っていますね。

 ただ最近、筋トレはできてません。テレビ局のロケ弁当ばっかり食べていてブクブク太ってきてしまって……。そもそも芥川賞をとってから最初にした高い買い物は、芥川賞の贈呈式用に買った10万円のスーツだったんですね。その後は特に高い買い物はしてなかったんですが、つい最近12万円のダンベルを買いました。海外のブロック式の本格的なもので、片側40キロ。さらにダンベルのピンを付け替えると重量が簡単に変えられる優れものです。忙しくて全然使っていなかったんですが、今日このイベントの前に初めてそれを使って筋トレしました。久々にきつい筋トレだったので、今ちょっとぐったりしてますが(笑)。

――ストイックな生活をされているようですが、たまにストイックでない生活をすることもありますか。

羽田 いやストイックではないと思います。ストイックだったらテレビ局の弁当を2個とか食べたりしないですから。

 あと取材を受ける流れで自宅を見せたりすると、どうも「整理整頓が完璧で潔癖すぎて結婚できない男の部屋」みたいな感じでカテゴライズされたりするんですが、実際そんなことないんですよね。部屋は確かにきれいにしていますが、それは視覚的にごちゃごちゃしていると、書くことに集中ができないからです。机の後ろにある本棚にあまり本を入れていないのも、本があるとつい読んでしまうからで、本はまとめて折り畳みコンテナにしまって隠してるんですね。……というように気が散らないように整理しているだけなので、あまりストイックじゃないです。

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スクラップ・アンド・ビルド
羽田圭介・著

定価:本体1,200円+税 発売日:2015年08月07日

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