日本でも始めよう!
アメリカ取材から帰って、日本でも「放課後NPO」を立ち上げないか、といろんな人に声をかけてみましたが、なかなか応じてくれる人はいませんでした。ところが、思わぬところから手が挙がりました。僕の高校・大学時代の友人の平岩国泰です。娘の誕生を機に、「娘のために、娘と同世代の子どもたちのために、そしてみんなのために、放課後改革に一肌脱ぎたい」と言うのです。
平岩に誘われて、後輩の織畑研も加わりました。織畑は自身の過酷な中学受験体験から、子どもの教育問題に関心が強く、一度某大手電機メーカーに就職しながら、四年で辞め、教育関係のベンチャー企業に勤めていました。平岩は会社勤めをしながらの「二足のワラジ」ですが、織畑はやがてこの「放課後NPO」に人生をかけることになります。
この二人を中心に、二〇〇四年の夏から「放課後NPOアフタースクール」の日本における放課後改革への模索が始まりました。
が、初めは苦労の連続でした。プログラムを始めようにも、肝心の子どもが集まらないうえに、学校や公民館などからは胡散臭い存在に見られ、冷たくあしらわれました。それでも、ミシュランで星を三年連続獲得した一流店の料理人に「市民先生」をお願いした料理プログラム「料亭の味!」を皮切りに、少しずつ実績を積み重ね、やがて東京・世田谷区の公立小学校が受け入れてくれるようになりました。
どんなプログラムをやってきたかというと、例えば「放課後の家づくり」があります。ボランティアの一級建築士と大工さんが「市民先生」になり、一年かけて子どもたちの手で本物の家を作るのです。どんな家を作りたいか、子どもたち自身にプレゼンテーションさせ、それをもとに進めていったのですが、その過程で子どもたちは、ノコギリも挽けば釘も打ちます。建築士の図面、大工さんの技に、子どもたちは「本物」を感じずにはいられません。これは何にも増した「学び」でした。そして何より、いよいよ完成したときの子どもたちの喜びようといったら!
翌年はインテリアデザインにも挑戦し、「放課後の家づくり」は、二〇〇八年度と〇九年度の「グッドデザイン賞」を受賞しました。
松屋銀座へ弟子入りするプログラムもありました。東京・銀座の百貨店に小学生たちが弟子入りして、包装やお辞儀の仕方、陳列法、チラシ作りなどを学び、最後は店頭に出てお客様の相手をするのですが、子どもたちは教えられたことをきちんとこなし、親たちも感心することしきりでした。
こうした経験を積み重ね、今では「放課後NPOアフタースクール」は、百種類を超えるプログラムを子どもたちに提供できるまでになりました。
だからと言って、「アフタースクール」が順調というわけではありません。最大の問題は資金です。「市民先生」はボランティアでお願いするとしても、スタッフが無給では務まらないし、続きません。アメリカのような寄付文化がない日本では、財団法人などからの助成金、自治体などからの補助金や事業の受託、賛助会員からの会費といったものが頼りで、綱渡り状態です。みなさんのお力添えを切にお願いします。
平岩らの願いは、放課後の子どもたちに「豊かな居場所」を! 塾やゲームを凌駕する「楽しい学びの場」を! です。
「放課後NPOアフタースクール」の七年間の歩みをつづった本書は、その願いへのささやかな応援歌です。
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