2010.12.20 書評

子どもたちに「豊かな放課後」を!

文: 川上 敬二郎 (TBS「報道特集」ディレクター)

『子どもたちの放課後を救え!』 (川上敬二郎 著)

  今の子どもたちのお父さんお母さん世代や、もっと上の世代の人たちにとって、学校が終わった放課後は、広場で野球をしたり空き地で鬼ごっこをしたりして、友達と遊んだ時間帯ですよね。僕もそうして放課後を過ごした一人ですけど、最近の子どもの放課後は違うようです。「外でみんなで遊ぶ」ということが、めっきり減っている。

  これは本にも書いたことですが、去年(二〇〇九年)の春の平日の午後、都内の公園を四歳の娘と歩いていて、変てこなものに出会いました。一つのベンチをすっぽり青い布が覆っていて、下から何本かの肌色の脚が見える。青い布にはコブが三つあって、それが小刻みに動いているのですね。

  布の中に子どもが三人潜んでいるらしい。それにしても何をしているのだろう、と思いながら見ていると、やがて「おっしゃ! クリア!」という声と共に布がめくれて、小学五、六年生くらいの男の子が姿を現わしました。続いて残りの二人の少年も出てきた。彼らは布で暗闇を作り、携帯ゲームをしていたのです。一人一台ずつ、小さな画面と向き合って、必死でボタンを押し続けていました。

  今の子どもたちは、公園まで来て、あえて暗闇を作って携帯ゲームで遊ぶのか。子どもたちがそんな放課後を過ごしていることを、親たちは知っているのだろうか。と、そのとき強い印象を受け、いまだに覚えているのです。

なくなっている「居場所」

  放課後から「サンマ」が消えたと言われています。「サンマ」とは「時間」「空間」「仲間」の三つの「間(ま)」です。

  とにかく今の子どもたちは、塾や習い事に追われて忙しい。友だちと遊びの日程を決めるのに、手帳を取り出すのです。「月曜は塾、水曜は水泳、土曜はサッカーだから」と言って、スケジュールを調整しなくちゃならない。

  遊ぶ場所だって様変わりです。ある調査によると、子どもたちが放課後や休日によく遊ぶ場所としてまず挙げるのは、親世代がよく使った「広場や空き地」ではなく、「自分の家」や「友だちの家」。遊びの中身も缶けり、鬼ごっこ、秘密基地作りなどの「外遊び」が減って、ゲームやパソコン、トランプやカードゲームといった「中遊び」が主流になっています。

  今の子どもたちは、どんどん内向きになっている。

  塾や習い事に忙しいか、ゲームに夢中になっているか、そうでなければ遊び相手もなく孤立している――というのが一般的な子どもたちの姿で、みんなで楽しく過ごせる「居場所」なんてないのです。少子化の影響も大きい。

  かつて放課後の遊びの場は、異なる学年の子どもたちとも交わる場であり、遊びをみんなで創造する場であり、時には地域の大人や「お兄さん」「お姉さん」が見守ってくれる場でもありました。そんな中で子どもたちは、仲間同士のルールを学び、大人や先輩を見て「あんなふうになりたい」と刺激を受け、好奇心を駆り立てて遊びに熱中しました。様々な社会体験から学習意欲も育みました。

  でも今や、そんな「放課後の居場所」はなくなってしまった。ゲーム以外に、夢中になって遊べるものと出会えなくなっているのです。

子どもたちの放課後を救え!
川上 敬二郎・著

定価:1600円(税込) 発売日:2011年01月07日

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