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嗚呼(ああ)! 圧倒的『日本プラモデル50年史』

嗚呼(ああ)! 圧倒的『日本プラモデル50年史』

文:渡辺 洋二

『日本プラモデル50年史』(日本プラモデル工業協同組合 編)


ジャンル : #趣味・実用

  A4判、三百五十ページの大冊だが、驚くべきは、時代を追って十二章に分けられた内容だ。プラモ前夜から説き起こされる事柄は、有名無名のメーカーとおびただしい数のキットについてはもちろんのこと、個人の活動、技術的変遷の細部にまで及ぶ。流行と世相を絡めて詳述され、企画やネーミングの内幕など、恥ずかしながら知らなかった出来事、エピソードの連続で、へたな小説なんか近寄れないほど。

  正調プラモからややずれるが、レベル、コックス(ファンでした)、モノグラムの舶来製品を駆逐した、タミヤのスロットレーシングカー。その箱絵と部品に、ギュッとマニア心をつかまれたことを思い出す。ブームの裏事情も、このたび初めて教えられた。

  わが引退後に生じたプラモとオイルショックとの関わり、ガンダムなどキャラクターもの、ガレージキット、ミニ四駆(息子が入れ込みました)、海洋堂の食玩の風靡については、一から学ばせてもらうようなもの。予想外の大流行、対象の変化、技術の革新は、つねに諸刃の剣だと思い知り、人生指南にもなった。

  おびただしい資料や証言、写真によって構成されたこの本は「50年史」と銘打つのにふさわしく、国産プラモ史書の決定版と呼ぶのに躊躇(ちゅうちょ)しない。

  ところが、さらなる驚嘆が待っていた。特別付録のCD-ROM版「昭和プラモデル全リスト」がそれだ。該当期間の日本模型新聞を半年がかりで全部チェックして、じつに二万千五百のプラモを拾い出し、検索機能を持たせてあるという。

  興味関心のない方々には、単なる文字、数字の羅列にしか見えまいが、マニア(元マニアも)にとってどのキットがいつ、いくらで売り出されたか、特定の飛行機や戦車のキットが何種類出されたか、あのメーカーのあのシリーズには何があったのか、モーターで動くのか外形の正確さだけを追ったのか、などは興味津々のデータ、情報なのだ。

  すぐに試してみた。モーター組み込み式で、作るのにひどく苦労した耕運機。小学校の高学年のころだ。「耕運機」としかインプットできなかったが、瞬時に出ました。「三和模型・ホンダ耕運機・三八○円・一九六一年十二月発売」。

  ウ~ム、恐れ入りました!  この本、最高!

日本プラモデル50年史
日本プラモデル工業協同組合・編

定価:5040円(税込)

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