ノブレス・オブリージュの精神を
笹 昨今では、ソマリア沖の海賊対策や北朝鮮のミサイル開発問題など、自衛隊の活動が注目される出来事が増えてきています。これまで以上に一般国民にも関心が広がり、自衛隊の中身が問われるようになってきていると思います。
中村 そうですね。もっとも、観艦式や音楽祭などで立派なパフォーマンスを見せているだけではダメだと思います。自衛隊というのは本来、戦うための組織なんですから
笹 そうした意識を持つためには、何が必要だとお考えになりますか。
中村 いろいろありますが、特効薬は内局の廃止と、防衛大を本当の士官学校にすることです。後者は幹部自衛官に「ノブレス・オブリージュ」の精神を涵養(かんよう)するということです。それには、学生に学力より覚悟がなくてはいけません。そう言うと、「それでは学力が下がる」と反対する人が出てきます。私のような成績が悪い者も入ってしまいますからね(笑)。しかしそれなら採用人数を減らせばいい。足りない人員は一般大卒の採用枠を拡大すればいいだけの話です。
笹 旧海軍ではハンモックナンバーと言われていましたが、現在の自衛隊でも、防衛大や幹部学校の成績が昇進について回りますね。
中村 私は、ハンモックナンバーは必要悪だと思っています。非常事態での指揮権の継承順序が自動的にわかりますからね。しかし能力は成績だけではわかりません。奇跡と言われたキスカ島撤収作戦の木村昌福少将や、ルンガ沖夜戦の田中頼三少将は、成績は良い方ではありませんが実戦での成果は素晴らしく、日本より敵からの評価のほうが高いくらいです。
笹 学業の成績と実戦での能力は、必ずしも一致しないということですね。民間企業でも同じです。
中村 ええ。優等生は教科書や上司の言うとおりやるものです。でも、非現実的な教科書や頭の固い上司に従えば、負けることは戦史に明らかです。有能な人物は、自分の頭で考えます。しかし、今の自衛隊は官僚化して、どうしても前例踏襲になってしまう。自衛隊が国防組織として機能するためには、前例主義ではダメで、現役の自衛官たちには、そのことを認識してほしいと思っています。
笹 それなら、やっぱり本書を幹部学校の教科書にしてもらわなくてはいけませんね(笑)。――本日はどうもありがとうございました。
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