- 2015.01.06
- 書評
証券市場を席巻する超高速取引業者
次の狙いはネット広告市場か?
文:宮川 洋 (株式会社イード 代表取締役社長)
『フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち』 (マイケル・ルイス 著/渡会圭子・東江一紀 訳)
ジャンル :
#ノンフィクション
ネットユーザーの利用履歴が取引の材料に
2008年の金融危機以降、金融工学人材はウォール街からシリコンバレーへも大移動し、現在、広告・マーケティング分野では金融と同じ流れが進行中である。そういう意味で本書は現在の広告・マーケティング分野において金融業界同様のことが進行する可能性が高いという警鐘を与えてくれている。
インターネット上の広告枠の売買に関して、RTB(リアルタイム入札)、SSP(サプライサイドプラットフォーム)、DSP(デマンドサイドプラットフォーム)、 Ad Exchange(アドエクスチェンジ)等、人手の介入を極力なくし、注文の開始、発注、執行をシステムが決定していくことは既に実現されている。
また、消費者のネット上の行動履歴を大量に収集して分析する「DMP(データマネジメントプラットフォーム)」及び「ビッグデータ」に関するビジネスはすでに盛り上がりを見せている。これまでも、ネットユーザーの閲覧履歴などを分析する手法は行なわれてきたが、IT技術の発達により、より大規模に、より詳細に、より高速に分析できるようになった。さらに、スマートフォンの普及によって消費者の一日の行動履歴「ライフログ」の収集も容易になっている。
今後は広告・マーケティング分野でも「フラッシュ・ボーイズ」のような存在が生まれてくるだろうか? いやもう存在しているのかもしれない。 広告及びデジタル・マーケティング業界の人間にとっては本書は近未来の状況に警鐘を鳴らしてくれる必読の一冊である。
冒頭に紹介したVirtu Financial社について、ロイター通信が2014年11月中旬、以下の記事を配信した。
「超高速取引業者 Virtu Financial社が2015年春にIPOへ」(外部サイト)
「フラッシュ・ボーイズ」の更なる進化は、これからなのかもしれない。
※HFTは「高頻度取引(HFT: High Frequency Trading)」の訳だが書籍の記述にあわせて「超高速取引業者」として統一しています。
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