- 2015.01.27
- 書評
進化には途方もない時間がかかるという考えは、間違っている
文:渡会 圭子 (翻訳家)
『私たちは今でも進化しているのか?』 (マーリーン・ズック 著/渡会圭子 訳)
ジャンル :
#ノンフィクション
健康は現代人にとって大きな関心事だ。体によい食事やエクササイズに関する本がベストセラーとなり、テレビをつければ、さまざまなダイエット法について本当に効果的か検証している。アメリカでは最近、1万年以上前に生きていた原始人のライフスタイルをまねる健康法が注目を集めているらしい。“パレオ式”と呼ばれるその方法は、たとえば穀物や乳製品は食べない、主に肉を食べる、裸足に近い状態で走る、負荷の高い運動を短時間行なうといったことにこだわる。なぜ原始人と同じ生活をするのが望ましいのか。それは今の私たちが、急速に進歩を遂げた現代の環境には適応できていないからだ、というのがパレオ派の主張である。私たちの中身は石器時代の人間と同じなので、当時と同じように生活をするのが、体にも心にも適しているのだと。
本書の著者である生物学者マーリーン・ズックは、その考え方に異議を唱えている。パレオダイエットやエクササイズの、個々の方法にではなく「人間が完全に環境に適応していた時代があった」という、その前提に対してだ。人間にしろ他の動物にしろ、外見から生活方式まで、現在の姿になったのは自然選択による偶然であり、環境に完全に適応することはありえない。現在の生物の姿は、妥協の産物だというのが彼女の主張だ。パレオ派の中には農業が定着して穀物を食べるようになったのが、諸悪の根源とする考えもあるが、定着するからには有利なことが必ずあったはずだ。それがある一面で不都合を引き起こす。そのようなトレードオフが、進化にはつきものだという。そして進化は今でも進行中だ。
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