本書の前半部分では、現在が、ITの進化、グローバリゼーション、人生の長期化などによって、産業革命期以来の「革命的」な変革の時期だと書かれています。この点の認識は、私もまったく同じです。
しかも、その「革命的変化」は“大きい”ばかりでなく、いまだかつてなく“速い”ことに、私自身は注目しています。大きい変化でもそれがゆっくりであれば、働き方にはそれほどのインパクトは与えなくてすみます。変化には、次の世代が対応してくれればよいからです。変化が速いとそういうわけにはいきません。一人のライフサイクルよりも速く技術が変わっていき、社会が変わっていくので、それに合わせて一人ひとりが大きく変化していく必要が出てくるからです。本書にも指摘されているように「一生ひとつの仕事が非現実的」になっていくのです。
現状を見ても、その兆候はあちこちに表れているように思います。大企業をみれば、一見、終身雇用が機能しているようにも見えます。しかし、有名な大企業ですら中高年を大リストラせざるを得ない時代になっています。これは、経営の失敗の結果という面もあるでしょうが、やはり時代の大きな波を受けた結果でもあります。今や残念ながら、どんな大企業であっても、リストラや倒産のリスクを抱えている時代です。それは、技術や産業の実態が大きく変化しているからです。
リストラには至らなくても、実質的に社内で仕事がない“社内失業者”も、全国で何百万人にも上っています。そういう人たちも、実は決してやる気がないわけではないのだと思います。会社を取り巻く環境が大きく変化してしまったために、自分の能力を生かす場所がその会社の中になくなってしまった場合がほとんどでしょう。これも、世の中が大きく変化した結果です。
とはいえ、能力を生かす場所がない、生きがいを感じて働ける場所がないというのは、個人にとっても会社にとっても、不幸なことです。そんな状態から抜け出して、もっと楽しく自分らしく働きませんか、というちきりんさんのメッセージが、だからこそ、とても大切になってくるのです。
一方では、働く期間はどんどん長期化しています。年金給付開始年齢は、このままいけば、70歳近くにしないと財政がもたなくなるのはほぼ確定でしょう。一方で、寿命は昔に比べて延びています。最近の私が関与している研究によれば、単に寿命が延びているだけではなくて、高齢者の体力は確実に伸びています。今の60代、70代は昔の60代、70代とは違うのです。元気に楽しく働ける期間は長くなっています。
70歳まで、同じ職場でやりたくもない仕事をお金のために続けるのか、それとも、自分の喜びとなるような、楽しくやる気のでる仕事をずっと打ち込んでいけるようにするか。どちらが良いかと聞かれれば、答えは火を見るよりも明らかでしょう。そして、どちらを選ぶかは、本書の後半部分でも書かれているように、人生後半で、自らのキャリアや仕事を見直すことができるかどうかにかかっています。
こんなことをいうと、「会社を辞められるのは、能力や経済力のある特別な人だけじゃないのか?」と言われることも多いです。でも、実はそんなことはないのです。ちきりんさんも書いている通り、そういう心配をする人は、一度も転職経験のない人がほとんどです。転職経験のある人は、外に出さえすれば、なんとかなることを経験的に知っているのです。
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