書評

雇用機会均等法から約30年
働く女性は、しあわせになったか

文: 上野 千鶴子 (東京大学名誉教授)

『女たちのサバイバル作戦』 (上野千鶴子 著)

 日本でウーマン・リブが誕生してから40年。このあいだに、日本の女は生きやすくなったのでしょうか。海外メディアや若いジャーナリストにそう問われるたびに、わたしはうーむ、と考えこんでしまいます。

 GDPは世界3位なのに、女性の地位を示すGEM(ジェンダーエンパワメント指数)では57位(2009年)、GGI(男女平等指数)では101位です(2012年)。男女賃金格差は縮小しないし、出産離職率も長期にわたって横ばいのまま。日本の女の状況がよくなったとはとても思えないからです。

 こんな時代、女性はどうやって生き延びていけばよいのでしょう?

 とりあつかった時代は均等法から今日までの、ほぼ30年間にわたります。そのなかで女にとってもっとも深刻だと思ったから、雇用と労働を中心に論じました。というのも、職がない、ということは食えない、ということと同じだからです。食わせてくれそうな男は激減しました。女が仕事を奪ったせいではありません。ネオリベのせいです。うらむなら女をうらまず、ネオリベ改革を推進した犯人たちをうらんでくれ。

 その30年間はわたしが働いて生きてきた30年間と、ほぼ重なります。本書はただの評論でもなければ、研究書でもありません。そのときどきに、わたしが怒ったり、笑ったり、してやられたと悔しがったりした同時代の記録でもあります。その歴史の生き証人としての観察や経験に加えて、データをもとに、世界史的な流れのなかに日本を位置づけ、その時代の波に翻弄されながら、日本の女性がどう変わってきたかを、論じました。

 この30年をひとことでいえば、「ネオリベ改革の時代」と言ってよいでしょう。ネオリベことネオリベラリズム、新自由主義と訳されます。市場原理主義と訳されることもあります。市場による公正な競争を通じて、優勝劣敗が決まり勝者は報酬を受け敗者は退場していくのが、競争のルールです。

 ネオリベ改革が労働市場にもたらしたのは「労働のビッグバン」こと非正規雇用の規制緩和でした。その結果起きた「雇用崩壊」から「格差」が拡大したと言われますが、「格差」はそれ以前から女性の問題でした。現在、非正規雇用者の7割は女性、女性労働者の6割が非正規雇用者、新卒採用の女性の5割以上を非正規が占めます。女性の選択肢は多様化したと言われますが、それはほんとうに自由な「選択」だったでしょうか?

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女たちのサバイバル作戦
上野千鶴子・著

定価:840円(税込) 発売日:2013年09月20日

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