戦国から江戸時代初期を題材に、数多くの小説が書かれてきた。その多くは武将たちの活躍や政治的駆け引きが主題だったが、そのとき妻たちはいかに生きていたのか? これまで日のあたることのあまりなかった、武家の妻女の思いを描く珠玉の短編集。それが『山桜記』だ。
「この本に『山桜記』という作品は入っていません。ただ武家の妻女の話という全体のくくりを考えたとき、ぱっと桜が浮かびました。昔の桜はソメイヨシノではなく、ほとんどが山桜。葉っぱもついていて、美しさとともに質素、質朴な印象も受ける。それでこのタイトルがつきました」
朝鮮出兵に駆り出された夫へ手紙を書いた妻、徳川頼宣の元へ嫁いだ加藤清正の娘、人質になることを拒み、死を選んだ細川ガラシャ……。女たちは自らの手でその運命を選択してゆく。
「時代的には、関ヶ原の戦いの前後から島原の乱までを扱っていますから、世の中には戦国の荒々しい気風がまだまだ残っていました。その中で、武家の女性はただ忍従するだけでなく、いろいろなものと戦っていたと思うんです。でもそれは柔らかな部分としたたかさを併せ持った女性が、力よりはむしろ優しさを武器に戦ったのではないかと。たとえば『ぎんぎんじょ』では慶
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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