2014.11.07 書評

恋人たちの「まどろみ」と「あこがれ」
極上の恋愛小説のラストにサプライズ!?

文: 大森 滋樹 (ミステリ評論家)

『ずっとあなたが好きでした』 (歌野晶午 著)

 恋愛は互いの勘違いの上に成り立つ――誰の言葉だったか。告白もデートも睦言もイチャイチャもすべては一方的な妄想の産物。たとえ相手が実在してもだ。なぜなら相手のほんとうの姿が目に入っておらず、都合よく理想化し美化しているからである。だが一方、この妄想=恋愛の期間ほど甘く楽しいものはない。他人の恋の話(コイバナ)を聞いて自分も盛り上がり、一緒に楽しんでしまうのは、何もテレビのバラエティ番組の世界だけではないのだ。

 歌野晶午の新作『ずっとあなたが好きでした』には13の短編が収められている。すべて恋にまつわる物語である。登場人物は初恋に胸ときめかせたり、電車のなかで見かけた美少女にひと目惚れしたり、ネットの掲示板で知り合ったHNしか知らない相手に会いに行ったり、ほのかな想いを秘めたままバイト先で知り合った女の子と花火を見に行ったりする。もちろん、富士の樹海での集団煉炭自殺、パリのレストランのワイン盗難や不審死事件、殺人の容疑をはらすために幻の帽子の女を探す(どこかで聞いたような)事件と、犯罪やサスペンスがからむものもある。しかしどの物語であれ、好意を寄せる相手にのめりこんでいく作中人物に読者が共感し、その妄想を共有する時、作者の仕掛けた巧妙な罠にかかってしまうだろう。

 1988年にデビューした歌野はすでに26年のキャリアをかぞえ、『葉桜の季節に君を想うということ』(2003)、『密室殺人ゲーム2.0』(2009)で本格ミステリ大賞を2度、受賞している。読者をミスリードし、サプライズを仕掛けるあの手この手に精通しており、すれっからしのミステリ読みも、見事なクロースアップマジックに興じるつもりでむしろだまされてみるべきである。

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ずっとあなたが好きでした
歌野晶午・著

定価:本体1,700円+税 発売日:2014年10月14日

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