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若冲、大雅、蕪村、応挙 画師たちの運命が 京の都で交錯する……

若冲、大雅、蕪村、応挙 画師たちの運命が 京の都で交錯する……

「本の話」編集部

『若冲』 (澤田瞳子 著)


ジャンル : #歴史・時代小説

現在サントリー美術館では「生誕三百年 同い年の天才絵師 若冲と蕪村」展(~5月10日まで)が開催中。伊藤若冲筆「果蔬涅槃図」(京都国立博物館蔵/サントリー美術館では展示終了)の実物を前に、澤田さんは「想像以上に大きいですね。図録にもサイズは書かれていますが、やはり実物を見ないと」。この展覧会は7月4日~、MIHO MUSEUMへと巡回する。 ※画像無断転載禁

――さて、この物語には最重要人物として、若冲の贋作を徹底して描き続けた画師が登場します。

澤田 若冲の贋作と言われる作品をいくつか見たのですが、それが非常によく描けているんですね。これだけ巧い絵を描けるのだったら、自分の名前を表に出した絵をいくらでも描けるだろうに、なんで贋作を描いていたのだろう? あの時代に贋作師は他にもいましたが、そもそも若冲の絵はそう簡単に真似できるものでもないし、あれだけの色彩の顔料代だって馬鹿になりません。あえて若冲の贋作を描いた画師の存在を考えているうちに、作品に出てくる市川君圭という人物が浮かび上がってきました。

 設定として考えたのは、「いちばん身近にいて、なおかつ他人」ということ。若冲の血縁者は過去帳ですべて分かっていますし、一般的には生涯独身で40歳で隠居してからは、絵事三昧に暮らしたと伝えられていますが、大きな商家の旦那さんが40歳まで独身で暮らしていたというのには、少なからず疑問がありました。家督相続をする時にやはり結婚はしているはずで、では記録に残っていない奥さんとは何者だったのだろう、と……。

 もう一人、作中には視点人物となる若冲の妹・志乃が出てきます。この女性も過去帳には記録されていませんが、老齢になった若冲が暮らしていた石峰寺を訪れた人の記録に、若冲が尼姿の妹と暮らしていて、そこには小さな男の子と暮らしていたと書いてあるんですね。そこからさらに設定を練っていきました。

 そのほか、若冲の生家・枡源がある錦市場が存在の危機に陥った時、助けの手をのべてくれた幕府の勘定役の中井清太夫、若林市左衛門らも実在した役人です。彼らはこの時期に禁裏の財政を預かる口向役人の不正摘発に関わった人物ですが、錦市場の騒動を記した伊藤家の史料にも中井・若林の名が出ていることに気付いた時は、俄然、興奮しました。作中の「つくも神」の章では、中井が若冲に接近したことにある意図を持たせています。これは私の推論であって、研究者の論文としては成立しませんけれどね(笑)。

 今回は小説の形を借りたことで、また新たな若冲の姿を描き出すことが出来たのではないかと思っています。

若冲
澤田瞳子・著

定価:本体1,600円+税 発売日:2015年04月22日

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