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『花の鎖』解説

『花の鎖』解説

文:加藤 泉 (株式会社有隣堂店売事業部勤務)

『花の鎖』 (湊かなえ 著)

出典 : #文春文庫
ジャンル : #エンタメ・ミステリ

 Kとは誰なのか? 紗月と希美子の過去に何があったのか? そして、この三人の物語がどのように繋がっていくのか? 謎解きをしていく感覚で読み進めていくと、ラストにあっ! と驚く展開が待っており、見事としか言うことができないほど、三人の女性の物語は一つの物語に収斂されます。

 さらに言うと、二回目に読む時はますます面白くなります。アカシア商店街の人々、梅香堂のきんつば、「さっちゃんファンクラブ」、こんなに色々なところにヒントがちりばめられていたのか! と嬉しいような悔しいような気持ちになることうけあいです。これから読まれる方は、是非、二回連続で読むつもりで本書に挑んでください。

 本書は、この構成の巧みさに目が奪われがちですが、やはりテーマは、湊作品を貫く「母と娘」。『告白』が「黒」だとすれば、本書は「白」。『告白』の主人公とはまた違った母の強さ、女性のしなやかな美しさ、母と娘の強固なつながりを描いたところに、湊さんの意欲を感じます。

「『告白』を代表作にしたくない」と、最も強い思いをこめて、本書は書かれたような気がしてなりません。真っ白な気持ちでお読みいただくことを願っています。

花の鎖
湊かなえ・著

定価:620円(税込) 発売日:2013年09月03日

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