過重労働を断れなかった末の“自殺願望”
──やはり、勝間さんだからこそ「断る力」があるのであって、私たち一般人はなかなか断れません。
勝間 私も以前は、皆さんと同じく、「断る力」などまったくありませんでした。上司から言われたことを実に素直に、淡々と実行してばかりでした。
周りからは「究極の優等生」と揶揄されながらも、長時間労働をただ黙々とこなし、クライアントや理不尽な上司の言うことに振り回され、その結果、十二指腸潰瘍やメニエール病も患いました。週末の終業間際に舞い込んできたクライアントの依頼を、救急車を呼んでもおかしくないような胃痛に悩まされながら、徹夜で仕上げたこともあります。
そんな過重労働に悩み苦しんだコンサルタント時代、自殺願望がなかったといえばウソになります。駅から会社まで、急な坂道を登りながら、「ああ、ここで倒れたり、手首を切ったりするとラクになるんだろうな」と思いつめたことが何度もありました。
当時は睡眠時間もロクにとれず、土日返上で仕事をする日々だったので、ウツ病に近かったのかもしれません。
──ストレスですね。
勝間 アンチ・エイジングの専門医師である澤登雅一先生と対談した折、「人間の老化の原因は酸化であり、酸化の原因は喫煙、飲酒、睡眠不足、間違った栄養、運動不足、そして過大なストレスです」と教わりました。そういう意味では、当時、若くして老化を早めていたということでしょう。
そんな日々、さまざまな人生指南書を読んでいくうちに、だんだんと「自分」を取り戻すようになってきました。そして、33、4歳になって、「断る力」の重要性に気づいたのです。
まさしく必要なことは、「To Do List(すべきことリスト)」ではなく、「Not To Do List(断ること、してはいけないリスト)」を作ることでした。
ある意味、私は「断る力」を身に付けるまで、「コモディティ」、すなわち、他人でも十分に代替がきく汎用的な人員だったと思います。その会社のやり方を着実にこなせる、滅私奉公ができる人であれば、誰でもよかったのです。
それに気づいてから、私の世界はドラマティックに変わりはじめました。私は社内で「断る」ことを実行し、仕事を減らしていきました。
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