──社内での軋轢はすごかったのではないでしょうか。
勝間 新しいやり方を支持してくれる人がいる一方、これまで私のことを便利使いしていた一部の上司とは、ソリが合わなくなりました。
それでも、仕事を断ることで自己投資の時間も増え、自分の生き方を見直す時間もできました。その結果として、コンサルタントから証券アナリストへ、経済評論家へという、「コモディティ」から「スペシャリティ」への道が開けたのです。
私があの時、「断る力」を身につけられなければ、いまでもコンサルタントか、プライベート・インベストメントのマネージャーを淡々とやっていることでしょう。長時間労働に悩みつつも、ある程度の高給をもらい、「高級コモディティ・パーソン」として生きていたと思います。しかし、そこに私の「幸せ」などどこにもなかったことでしょう。
──とはいえ、なんとなく「断れない空気」というのが私たちの周りに蔓延しているものですが。「お前はKYか」というような視線が突き刺さるさまが目に浮かぶようで……。
勝間 「断る力」を身に付けるには何よりも「空気を読む」のが大事なんですよ。
──それは意外です。
勝間 「無言の圧力」「その場の雰囲気」「相手が口には出さなくても自分に望んでいること」といったことを汲み取った上で、その相手に合わせて、いかに上手に断るかということが大事です。
「断る力」というのは、なにも上司や取引相手にむやみやたらにケンカを売ることを勧めているのではありません。
むしろ、上手に断ることで相手と「Win-Win」、双方とも得をする関係を築く力が求められるのです。
──勝間さんのような実力がある人でないと断れませんね。
勝間 「鶏と卵の関係」といっていいと思いますが、確かに「断る力」を身に付けるためには「実力」をつける必要があります。
そういった実力をつけるには十分な研鑽と準備が必要ですから、自分の実力が出せないような、余計な仕事をしている暇はありません。
私が「コモディティ」から抜け出せる実力がついたのは、「断ること」で自分自身のために時間を使うようになってからです。相手のためにばかり時間を使うというのは、思考を放棄して相手の手足となって「動く」ことを意味します。そこでは相手にとっての「使い勝ってのよさ」が「コモディティ」としての自分の価値を測る基準になってしまいます。
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