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私の作品の中で、最も華やかでスケールの大きな恋愛小説です

私の作品の中で、最も華やかでスケールの大きな恋愛小説です

「本の話」編集部

『天上紅蓮』 (渡辺淳一 著)

出典 : #本の話
ジャンル : #歴史・時代小説

――権力者としての白河法皇はどんな人物だったのでしょう。

渡辺   頭脳明晰で、きわめて優秀な政治家だったと思います。長年権勢を振るった藤原家の摂関政治を一気に駆逐し、天皇を補佐する名目で院政を40年以上も続けたその手腕は「治天の君」そのもの。平家物語には、法皇が「賀茂河の水、双六の賽、山法師、是ぞわが心にかなわぬもの」と嘆いたという一節があります。自分の意のままにならないものは、その3つだけだ、ということで、まさに最高権力者でなければ口に出来ない言葉です。とにかく日々、精力的に動いていた人、という印象が深い。生きるエネルギーにみちあふれていたからこそ、全力で権力を掌握するとともに、璋子にありったけの愛を注ぐことができたのだと思います。男は、偉人であれ大悪党であれ、まずエネルギーがなきゃダメです。今の日本の政治家には、残念ながら法皇のようなエネルギーや気迫を感じる人物が一人も見当たらない。表面的なモラルやルールに縛られて、強引にことを運ぶことができないようで。

――その愛を全身で受け止めた璋子にもまた、強いエネルギーを感じます。彼女の女性としての成長も、この物語の読みどころのひとつです。

渡辺   柔らかなしたたかさ、といったものを璋子には感じます。さまざまな出来事を経て、彼女はどんどん美しく、賢くなる。もちろん、白河法皇への愛も、限りなく深くなっていく。しかしながら、鳥羽天皇を愛することができなかった、というわけではありません。白河法皇が鳥羽天皇に退位を求めた時、璋子は狼狽する天皇を前に“静かに時を待て”“いつか上皇として法皇の地位を継ぐことになる”と穏やかに諭します。この3人の不思議な関係について、最も冷静に自覚していたのは璋子ですし、その関係が破綻しないよう最も気を配っていたのも、間違いなく彼女だったと思います。だからこそ、これほどまでに魅力的なのでしょう。

――現代日本を代表する日本画家・大野俊明さんが描かれた装画も素晴らしい出来ばえです。

渡辺  おそらく、これまでの著作の中で、最も華やかな装画になりました。あまりにも美しい出来ばえだったので、帯の上にも絵柄を載せることにしました。ぜひ手にとってその美しさを楽しんでほしいですね。

――最後にひとつ、『天上紅蓮』というタイトルの由来を教えてください。

渡辺  角田さんの本を読んだ時に、「紅蓮」という言葉がすぐ頭に思い浮かびました。璋子の生涯、白河法皇の生涯、二人の愛は「紅蓮」という言葉でなければ表現できない、そう思ったんです。「天上人」とその周辺の人々の命の炎、愛の炎が紅蓮の如く燃えさかるさまが、物語を大きく包んでいます。現代を舞台にしていたら、これほど壮大な恋愛小説は書けなかったかも。その意味で、私のこれまでの作品の中では、最も華やかでスケールの大きな恋愛小説になった、と思います。

天上紅蓮
渡辺 淳一・著

定価:1680円(税込) 発売日:2011年06月30日

詳しい内容はこちら この本の特設サイト

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