――禅宗寺院として有名な京都・相国寺での講義が元になっているのが、この本のユニークなところですね。
佐藤 きっかけは、旧約聖書学の国際的権威で、同志社の私の指導教授で、理事長もなさった野本真也先生からのお誘いでした。
相国寺は、同志社大学の隣にあり、明治時代には、「なに? 耶蘇が?」という反発もあったようです。野本先生から、「同志社の神学部で学んだ人間が相国寺で話をするというのは、同志社と相国寺の歴史において画期的なことだから、ぜひ引き受けてほしい」と言われ、お引き受けしました。
相国寺は、私にとっても懐かしい場所です。同志社の神学部で学んでいた頃、よく法堂の石組みの上に座って友人と弁当を食べたり、難しい神学書を読んだりしたからです。
京都の金閣寺と銀閣寺は、いずれも相国寺の塔頭寺院で、相国寺派は、“生きている宗教”として、現在もたいへん力をもっています。1985年に実施され、わずか2年半で廃止された「古都税」の反対運動においても、その中心を担ったのは相国寺派で、宗教の自立ということに自覚的で、現実の問題にも意識の高い宗派です。そういう僧侶たちに、キリスト教のことや、世界のことや国際情勢にも目を向けてほしい、という思いで話したのが、この講義です。
第1次大戦から100年という節目
――この本では「危機と宗教」がテーマになっています。今、私たちは、どのような「危機」にあるのでしょうか。
佐藤 今年は、第1次大戦開始から100周年に当たります。この年にこの本を出すことに大きな意味を感じます。
第1次大戦について、イギリスの歴史家ホブズボームは、「長い19世紀の終わりであり、短い20世紀の始まりだ」と述べました。啓蒙思想の信念 ――一部にロマン主義もありましたが、基本的には、科学技術を発展させ、人間の理性を向上させていけば、人間の社会はよくなっていくという信念――が根底から崩壊した、ということです。
第1次大戦は、当初、「数週間で終わる」と思われていたのが、結局、4年にもわたる長期戦になりました。サラエボでのたった2発の銃声が、なぜあれほどの惨事を招いたのか。その原因はいまだよく分かっていません。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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