斉藤 『東京見便録』は、以前『東方見便録』(文春文庫)を出したあとに、じゃ、東京はどうなっているんだという疑問からはじまったんだよね。
内澤 アジアの強烈な経験のあと、でも日本のトイレもある意味変だよなぁ、みたいなかんじで。
斉藤 日本にいるときは、当然だと思っていた排泄の行為やトイレの設備が……。
内澤 実は世界的に見てみると相当変わっていますよね。
斉藤 便器の向きからしてちがうもの。
内澤 そう、アジアや西欧では扉を開けて個室に入ったあと一八〇度回転して扉側を向いてしゃがむんだけど、日本の和式便器は扉にお尻を向けるか、横向きにしゃがむレイアウトになっている。
斉藤 洋式便器のように扉に向いてしゃがむ和式は見たことないなぁ。
内澤 他にウンチとオシッコが同時にできるのは東洋人だけで、西洋人には無理らしいとか。
斉藤 そういえば、僕の知り合いは、昔アメリカを放浪したとき、同時にやって見せてチップもらったことがあるって豪語してた。
内澤 で、前回同様、排泄文化から今の東京が見えてくるんじゃないかと。
斉藤 結果、東京はやっぱりディープだった。
内澤 いろいろお邪魔しましたが、SM専門ホテルのアレはインパクトありました。
斉藤 部屋に名前が付いていて、僕らが入ったのは『拷縛便器』という名前がついていた。
内澤 中は予想外に清潔な室内でホッとするんですけど。