- 2014.12.12
- 書評
みんな読まないで! と自動車評論家が嫉妬
名車GT-Rを生んだ「カリスマ水野」の濃厚ミソ本
文:フェルディナント・ヤマグチ (コラムニスト)
『バカになれ! カリスマ・エンジニア「ゼロからの発想術」』 (水野和敏 著)
ジャンル :
#政治・経済・ビジネス
小さなホームパーティーに持参した肉じゃがで人を感動させる。水野さんはそんな魔法のようなことが出来る人です。
素材を厳選しているのは勿論ですが、水野さんはこの肉じゃがのために井戸水を汲み、ダシを取るにしても鰹節を削る所から始めたのだそうです。ネギを刻むために持参した包丁も、自分で砥石に当てて研いでいます。
“たかが”と言っては失礼ですが、たかが肉じゃがのためにここまでやる。とことん突き詰め、最上のモノ作りを目指す。その結果、それを食べた人は全員感動し、幸福になる。
実は水野さんは私がいま書いた「モノ作り」という言葉を嫌います。
目指すのは人の感動。人の歓び。モノはそのための手段でしか無い、と。
カリスマ、という言葉が大安売りされている昨今、カリスマ・エンジニアと言うと口の悪いラーメン店主や売り込み上手な高校生を思い浮かべてしまいますが、水野さんはその言葉本来の表す「常人を超える資質」を持つ鬼才です。
本書はそのカリスマ水野さんが、平易な口調で仕事術、発想術を語っています。私が何年もかかって聞き出してきた「ミソ」の部分が、サラッと普通に書かれています。
この凝縮された濃厚なカリスマミソを、たかだか1300円程度で知ることが出来る読者のみなさんは本当に幸運です。私は軽い嫉妬すら覚えます。正直に申し上げると買って欲しくないです。だって私が何年もかかって、やっと教えて貰ったことなんですよ。そんなのズルいじゃないですか。
ああ、買わないと出版元が困るでしょうから、買うのは構いませんが、できれば読まないで欲しいと思います。
これじゃ書評にならないですね。どうもスミマセン。
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