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みんな読まないで! と自動車評論家が嫉妬<br />名車GT-Rを生んだ「カリスマ水野」の濃厚ミソ本

みんな読まないで! と自動車評論家が嫉妬
名車GT-Rを生んだ「カリスマ水野」の濃厚ミソ本

文:フェルディナント・ヤマグチ (コラムニスト)

『バカになれ! カリスマ・エンジニア「ゼロからの発想術」』 (水野和敏 著)


ジャンル : #政治・経済・ビジネス

水野和敏 1952年長野県生まれ。高専を卒業後、72年日産自動車に入社。知識をもてあましてふて腐れ、出向した販売店で、乗り手にとっての「車の本質、感動の本質」に目覚める。その後、P10プリメーラパッケージやスカイライン、フェアレディZなどの開発責任者となり、とくにカルロス・ゴーン直轄で「日産GT-R」の開発・生産から販売まで統括責任者をつとめ、世界の王室をも顧客に。89年からはNISMOレーシングチームの監督兼チーフエンジニアとして、国内耐久選手権3年連続チャンピオンおよびデイトナ24時間レース総合優勝を獲得した。2013年、退社。2014年からアジア圏で新たな挑戦を始める。

 小さなホームパーティーに持参した肉じゃがで人を感動させる。水野さんはそんな魔法のようなことが出来る人です。

 素材を厳選しているのは勿論ですが、水野さんはこの肉じゃがのために井戸水を汲み、ダシを取るにしても鰹節を削る所から始めたのだそうです。ネギを刻むために持参した包丁も、自分で砥石に当てて研いでいます。

“たかが”と言っては失礼ですが、たかが肉じゃがのためにここまでやる。とことん突き詰め、最上のモノ作りを目指す。その結果、それを食べた人は全員感動し、幸福になる。

 実は水野さんは私がいま書いた「モノ作り」という言葉を嫌います。

 目指すのは人の感動。人の歓び。モノはそのための手段でしか無い、と。

 カリスマ、という言葉が大安売りされている昨今、カリスマ・エンジニアと言うと口の悪いラーメン店主や売り込み上手な高校生を思い浮かべてしまいますが、水野さんはその言葉本来の表す「常人を超える資質」を持つ鬼才です。

フェルディナント・ヤマグチコラムニスト。堅気のビジネスマン稼業のかたわら、覆面コラムニストとして、自動車評論、恋愛投資論などを手掛ける。主な著書に『英語だけではダメなのよ。 結果を出す!NISSANのグローバル仕事術』(日経BP社)、『ちょいモテvsちょいキモ』(渡辺和博と共著・文藝春秋)などがある。

 本書はそのカリスマ水野さんが、平易な口調で仕事術、発想術を語っています。私が何年もかかって聞き出してきた「ミソ」の部分が、サラッと普通に書かれています。

 この凝縮された濃厚なカリスマミソを、たかだか1300円程度で知ることが出来る読者のみなさんは本当に幸運です。私は軽い嫉妬すら覚えます。正直に申し上げると買って欲しくないです。だって私が何年もかかって、やっと教えて貰ったことなんですよ。そんなのズルいじゃないですか。

 ああ、買わないと出版元が困るでしょうから、買うのは構いませんが、できれば読まないで欲しいと思います。

 これじゃ書評にならないですね。どうもスミマセン。

バカになれ!
水野和敏・著

定価:本体1,300円+税 発売日:2014年11月27日

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