20代から40代の人間を多く描きながら、心の中にはずっと、もやもやしたものがあった。団塊の世代だけは、やはり特別なのだ。とにかく人数が多いし、目立つし、未だに元気だし……60年代後半から70年代にかけてのあの時代の熱も、どうしても理解できない。あの時代については資料も豊富で証言も多いのだが、知れば知るほど、何だったのか分からなくなってしまう。
私の仕事は「論」として何かを語ることではなく、小説を書くことだから、もやもやした気持ちは結局、小説にぶつけるしかない。
依然として「謎」
『衆』を書こうとした直接のきっかけは、『オール讀物』の同じ新人類世代の編集者と交わした雑談で(内容については、関係者の怒りを買いたくないので秘する)、団塊ジュニア編集者の援助を得て連載は始まり、何とか完結にこぎつけた。『衆』は、40年以上前の事件が、ある出来事をきっかけに吹き出し、当時かかわった人、現在関係する人が翻弄される、という物語だ。登場人物たちが過去の事件の真相を探っていくのだから、いわゆるミステリに分類されてもおかしくはない。
ただ、書いた本人としては、ミステリだという意識は薄い。これは、新人類世代が、団塊の世代をどう見ているかを、様々な角度から語る物語なのである。ところが結論だけ申し上げてしまうと、「結局我々も団塊の世代も、ある一点については同じ」だった。何がどう同じなのかは、読んでいただくしかないのだが。
しかし、やっと本にまとまる段になっても、依然として団塊の世代は私にとって謎である。今後も考えると悶々としてしまうのだろうが……知らんぷりをしてしまうには、あの世代はやはり巨大過ぎる。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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