ニュージーランドの「飛べないオウム」カカポ、アリューシャン列島のウミスズメ、バハ・カリフォルニアの海鳥――。一般には知られていない生物が、地球の片隅の島々でひっそりと絶滅に向かっています。本書はそのような貴重な種を救おうと立ち上がった人々の物語です。
島が陸地に占める面積は5パーセントにすぎないものの、絶滅の大半は島で起きており、絶滅した鳥と爬虫類の3分の2は島で暮らしていました。大海に囲まれた島は、外敵を寄せつけないパラダイスとなって生物の誕生と進化を支えますが、いったんそこにネズミ、ネコ、イタチ、ヤギ、ブタ、ウサギなど外敵が入り込むと、逃げ場のない檻と化すのです。猛獣とともにコロッセウムに放り込まれたようなもので、死ぬまで、絶滅するまで、それらに追われる運命となります。
オセアニアでは、初期の移住者や、彼らが連れてきたネズミのせいで、ヨーロッパ人が来る前に、すでに2000種の動物が消えていたそうです。クック船長を皮切りとするヨーロッパ人の到来はその絶滅をさらに加速させ、最終的に8000種が消えたと見積もられています。
悲劇は北の島々でも繰り返されます。アリューシャン列島ではまず「毛皮ハンター」という外来種が生態系を壊滅的なまでに破壊し、その後も人間が持ち込んだホッキョクギツネとネズミのせいで、かつては空を埋め尽すほどいた海鳥が絶滅に向かいます。
しかし、人間はそれをそのままにはしておきませんでした。19世紀末という早い時期にニュージーランドでカカポの救済に立ちあがったのは、学者ではなく、「森の人」、リチャード・ヘンリー。ヘンリーは当時の学者たちからは教養のない田舎者と軽蔑されていましたが、実際はだれよりもカカポに詳しく、それゆえにだれよりも早く保護の必要性に気づいていました。保護活動がスタートしないことを悲観して、ピストルで自殺を試みるほどですから、情熱の度合いは察するに余りあります。
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日本の頂点捕食者を考える
2014.05.30書評
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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