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「終幕」を迎えたので「沈黙」して「解体」します 成松哲

「終幕」を迎えたので「沈黙」して「解体」します 成松哲

成松 哲

『バンド臨終図巻 ビートルズからSMAPまで』 (速水健朗・円堂都司昭・栗原裕一郎・大山くまお・成松哲 著)


ジャンル : #ノンフィクション

 当然“撤収”組も“卒業”組も、冒頭のバンド・グループ同様、解散前後には派手なテレビ出演やラストコンサート、音源・映像のリリースなどを行っているが、その一方で、あからさまなビジネスにこそしないものの、解散・活動休止を指す言葉だけにはこだわる面々もいる。

 P-MODELは活動を休止するたびに「凍結」「改訂」「待機」「バグ」を宣言。ダウン・タウン・ブギウギ・バンドは、81年大晦日にバンドを「解体」している。

 P-MODELの「凍結」宣言は、解散・活動休止を「ドラマティックな」ものにしたくなかった平沢進の判断によるものであり、ダウン・タウン・ブギウギ・バンドの「解体」は、路線転向による売り上げ不振などに悩まされていた時期のできごと。これらの表現が、解散・活動休止時のバンドを巡る状況に対する違和感や不服の表明であったと考えても、あながち間違いではないはずだ。

 そして、この違和感・不服表明型の究極ともいえるのがCOMPLEX・吉川晃司の言葉。90年に布袋寅泰との不仲が原因でグループが解散したいきさつを「活動急死」だったと語っている。これほどシャレが効き、言い得て妙なひと言はそうはない。

 なお、WANDSも00年に「解体」しているが、同じく「解体」したダウン・タウン・ブギウギ・バンドとは事情が異なる。WANDSが「解体」を発表したのは公式サイト上でのこと。この公式サイト、ひいては、インターネットはあらゆるバンドの解散報道のありようを大きく変えた。

 近年、新聞、テレビ、雑誌などの既存メディアではなく、公式サイトで解散宣言するバンド・グループは多い。ファンに自らの言葉を届けられる直接性、インターネットならではの速報性を期待してのことだろう。解散劇をワイドショーやスポーツ新聞などで、いかにもイエロージャーナリズム的なスキャンダル、芸能ネタとして扱われることを嫌う側面もあるのかもしれない。

 また、音楽番組や音楽誌が減少している今、たとえ一線級のバンドであっても、メディアにプレスリリースを配布したところで、ニュース化してもらえないおそれもある。それまでの5年間、散発的にしか活動しておらず、自身が発表するまでもなく「解体」状態にあったWANDSの「解体」が大々的に報道されることは、おそらくなかっただろう。

 NUMBER GIRLや、THEE MICHELLE GUN ELEPHANT、ELLEGARDENのようにある意味“そっけなく”公式サイト上で解散を伝えるバンドがいる一方、既存メディアでの露出が減ったバンドにとって公式サイトは最後の砦。WANDSが「解体」などという大仰な言葉を持ち出したように、その解散を“デコラティヴ”に演出できる、唯一の場として機能するのだ。

成松哲(なりまつ・てつ)

1974年大分県生まれ。出版社・編集プロダクション勤務、フリーライターを経て、現在音楽ナタリー(http://natalie.mu/music)所属。著書に『凶暴両親』(ソフトバンク新書)がある他、編集協力に江頭2:50『江頭2:50のエィガ批評宣言』(扶桑社)、津田大介『Twitter社会論 ~新たなリアルタイム・ウェブの潮流』(新書y)など。

文春文庫
バンド臨終図巻
ビートルズからSMAPまで
速水健朗 円堂都司昭 栗原裕一郎 大山くまお 成松哲

定価:1,078円(税込)発売日:2016年12月01日

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