- 2015.04.16
- インタビュー・対談
旧幕府軍に味方したフランス人
「オール讀物」編集部
『ラ・ミッション 軍事顧問ブリュネ』 (佐藤賢一 著)
出典 : #オール讀物
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
幕末の日本に、旧幕府の軍事顧問団としてフランス人が来日していた。その中心的人物を描いたのが、佐藤賢一さんの最新作『ラ・ミッション 軍事顧問ブリュネ』だ。
佐藤さんは、なぜブリュネに注目したのか。
「『新徴組』という小説で薩摩藩邸焼き討ちを描きましたが、その指揮を取ったのがブリュネでした。さらに調べると、彼が映画『ラスト サムライ』のモデルであることもわかり、一層興味が湧いてきた。これは面白い歴史小説が書けるかもしれないと思ったんです」
ブリュネは1867年に来日し、1年以上幕府の伝習隊を指導したが、旧幕軍は戊辰戦争で敗北。帰国命令が出たにも関わらず、榎本武揚率いる旧幕艦隊に合流し、箱館戦争を戦う。このとき彼はフランス軍人でなく、一個人として従軍しているのだ。
「驚いたことに、彼はフランス本国からの帰国命令に逆らって箱館戦争に参加しているんです。旧幕府軍に味方をして得することは一つもないのに、自分を慕ってくれる者の力になりたい、という一心で戦場に駆けつけたのがブリュネでした。義理や人情で負け戦に挑むってすごく日本的じゃないですか? 欧米人はもっと合理的でドライだと先入観がありますよね。でも時代背景を踏まえると意外と納得できる。彼は通訳の田島金太郎に、アラミスというあだ名をつけている。ピンと来る人もいるかもしれませんが、『三銃士』の主人公の一人の名前です。この頃はちょうどフランスロマン主義の全盛期でした。ブリュネはその影響を受けたのではないかと考えれば、彼の“日本的な振る舞い”も理解できます」
この小説を読んで驚くのは、ブリュネの行動だけではない。旧幕府と新政府の争いだけでは説明しきれない、まったく違う幕末の風景が見えてくる。
「この時代は列強が植民地を求めて、どんどん世界進出を進めていました。一足先に清が半植民地化されましたが、日本がいつ同じ状態になってもおかしくなかった。というのも、当時の英国公使パークスとブリュネのボスのシャノワーヌは、アロー戦争の当事者で、いわば清の半植民地化を決定づけた張本人。この2人が幕末の日本にいたと知ったときは、ぞっとしました。今回小説を書いてわかったのは、英仏の思惑の中で日本は綱渡りをするように独立を守ったこと、そして独立維持の重要なファクターの一つに軍事顧問団がいたことです。最初は、幕末の風変わりなフランス軍人に興味を持っただけでしたが、書き終えてこれだけ発見の大きかった小説も珍しいですね」
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