インタビューほか

悲惨な人生の結末は?
樹海の魔力に引き寄せられるものたち

「本の話」編集部

『樹海』 (鈴木光司 著)

「死」を意識し、樹海に足を踏み入れる人々を描いた連作短編集『樹海』。6つのエピソードには、著者の鈴木光司さんいわく「それぞれ長編が1本ずつ書ける」というほどの着想が詰め込まれています。作中で味わうことができるのは、樹海に至る人々のひととおりでなく悲惨な人生。この濃厚な「樹海シリーズ」を長い期間かけて執筆されてきた理由を、著者に伺いました。

――作中には、登場人物が樹海で自殺者の遺留品を見つけるシーンがありますが。

 あれは実際の体験に基づいています。樹海のガイドの方が前日に遺留品がある場所を見つけたというので、そこまで案内してもらいました。バッグや免許証などが落ちていたのですが、印象的だったのはその場所自体でした。少し開けていて、ちょっとした広場のようになっていた。なんとなくしっくりくるというか、ここを最期の場所として選ぶ気持ちも、分かるような気がしました。

――取材を経て、富士の樹海を連作の舞台にされたわけですが、もう一つ、『樹海』には短篇の枠を超えて、作品全体に隠された関係性が張り巡らされている、という特徴があります。

 そうですね、これは「因縁」の物語でもあります。氷山の一角、という言葉がありますが、たとえば目の前にぽんと二つの氷山が出現したとして、普通に見ると別々の氷山のように見えますね。しかし、海の底に潜ってみると、その二つは下でつながっていて、大きな一つの氷山だったりするわけです。この作品には、そんな関係性が多く出てきます。現象として見ると別個のことだけれど、実は裏で繋がっている。そんなことが、現実の世界にもすごく多いと思うんです。

――隠された血縁関係や、故郷にまつわる縁……因縁に気づかず、振り回される人が多いなか、強い意志を持って因縁を利用する登場人物も出てきます。

 この作品は、まずい人生のオンパレードですが(笑)、ひとりだけ、他とは対極の考え方をする人物を配置しました。他の登場人物が、人生のある時点で選択に迫られたとき、楽なほう楽なほうに流されるのに対して、彼だけが未来を見据えた選択をしている。それが結果的に、強運を引き寄せることになるんです。不運な人間と幸運な人間、その思考の違いについても作中から読み取ってもらえればと思います。

樹海
鈴木光司・著

定価:本体1,500円+税 発売日:2015年04月13日

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