2004.06.20 インタビューほか

〈対談〉『ぐるすべ』も実はパラレルなんです

「本の話」編集部

『ぐるぐるまわるすべり台』 (中村航 著)
『パラレル』 (長嶋有 著)

――中村さんは今月上旬に『ぐるぐるまわるすべり台』を上梓され、長嶋さんの『パラレル』は下旬に刊行されます。

 最新作が同月に出るのは偶然かもしれませんが、お二人が出会い、親交を深めていったことは必然のような気もします。年齢も近いし、これまでの作品を読んでも、その世界観や感性には共通する部分があるという印象を受けます。

 まずは、お二人の馴れ初めから教えていただけないでしょうか。

『パラレル』 (長嶋有 著)

長嶋 そこから話すんだ(笑)。僕は「文藝」を読んでいたから中村航という名前はもちろん知っていましたが(「リレキショ」で文藝賞受賞)、作品との出会いは「夏休み」からなんです。

 ある編集者に「すごく侮れない、いい小説がある」と教えられて、読んでみようかと。そしたら、本当に侮れなかった。敗北感とまでは言わないけれど、俺はこれを書けん、みたいな衝撃を受けました。

中村 おー。

長嶋 それで僕は書評(「中央公論」)で「問題作だ」と書いたんです。一見爽やかにみえるが、死人がたくさん出るような話よりもよほど危険な小説だと。僕はここまで何かの方向に突き抜けることができないなあと感じました。

中村 僕は文藝賞の最終候補に残った時に「この間芥川賞をとった長嶋有さん」の話題になったんですが、実はその時点でまだ受賞作を読んでいなかったんです。帰ってから、これは何をおいても、ということで『猛スピードで母は』を読みました。そうしたら、まずとにかく同世代感が非常にあって。

 僕は長嶋さんより年齢は少し上ですが、デビューは一年後で、同世代で自分のちょっと前にデビューした作家というと長嶋さんと吉田修一さんの名前が必ず出てくるわけです。

長嶋 そうか、デビューは一年違いなのか。それにしても、中村さん、付箋の量すごいね。今日は『ぐるすべ』(『ぐるぐるまわるすべり台』)を題材にしつつ、中村作品の突き抜け具合の謎を解き明かそうと思ってきたんだけれども、早くも負けたような気がする。

中村 まあ、付箋を貼ったすべての箇所に何かが隠されているわけではないのですが……(不敵な笑い)。長嶋さん初の長篇ということで大いなる期待と多少の不安が入り混じった気持ちで読みました。

長嶋 「文學界」掲載時にすぐに読んでいただきましたよね。僕も「ぐるすべ」は「文學界」掲載時に読みました。この時は、芥川賞候補作が面白いなあと思って、全部読んでやれ、と。

 その中で「ぐるすべ」は、俺しかこれをわからないのではないかという感じがしたんです。それが、僕の第一印象。でも、いい作品というのは、このよさがわかるのは俺だけじゃないか、みたいな感覚を多くの読者に持たせるという感じはありますよね。

 一方「月に吠える」(書き下ろし/『ぐるぐるまわるすべり台』に収録)は、やられたと思った。QC(クオリティ・コントロール)って、僕も使いたかったんですよ。会社小説を数年前から考えていて、会社を舞台にした恋愛や立身出世の小説はあれど、会社そのもののことを書いた小説が少ないので狙い目だと思っていたんです。でも先にやられてしまった。QC活動って導入<されている>感というのがまずあって、美しい理論と、ぼーっとそれを聞いている社員側の間に張っている膜のようなムードが非常にうまく出ていますね。

中村 QC活動の前提が全くわからない人には伝わりにくい部分もあるかもしれませんが、わー、こんなのも小説になるんだと意外に思っていただければいいなあと思います。

 僕は、長嶋さんの長篇はどんなふうになるんだろうと思っていたら、綿密に伏線がはってあって、それが成功していた。長嶋さん、こんな手法も使うんだと。

長嶋 そうですか。僕はずっと短篇が中心だったから、短篇では伏線がきちっと決まってガッツポーズみたいな感覚があるんだけど、長篇になると、何を俺、伏線はってるんだよ、みたいな感じもありましたね。だから、つい伏線に走ってしまうところを抑えて、極力削って残った形が今回の作品です。締め切りも迫っていたから、執筆の過程では青息吐息だったというのが正直なところなんですけど。

【次ページ】「パーフェクト」への志向性

ぐるぐるまわるすべり台
中村航・著

定価:本体500円+税 発売日:2006年05月10日

詳しい内容はこちら

パラレル
長嶋有・著

定価:本体505円+税 発売日:2007年06月08日

詳しい内容はこちら



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