いま、アンチエイジング医学の世界では、「運動」と「食事」に加えて、「ごきげんに生きる」ことが長寿の秘訣としてサイエンスになりつつあります。以前は「ごきげん」という言葉を健康や長寿と関連づけると「非科学的だ」と言われたりもしましたが、近年では「ごきげん」や「幸せ」と長寿の関係を示す科学的な研究結果が蓄積されてきて、状況が大きく変わりました。僕がアンチエイジング研究をはじめて10年あまりになりますが、今回、「幸せと長寿」に関する最新のサイエンスの成果と、「ごきげん」に生きるための具体的な実践方法をまとめてご紹介できることを、とても嬉しく思っています。
というのも、日本人は世界一の長寿国であるにもかかわらず、近年の幸福度調査によれば、幸福度がとても低いという結果が出ているからなんです。自殺者数が多く、うつ病も社会問題になっているように、今は確かに日本人のごきげん力が低いのかもしれない。でも、「幸せだから、長生きする」という「ごきげん」の力を理解して、1人ひとりが幸せを感じる力を取り戻せたならば、日本人はより長生きできるようになるのではないでしょうか。
そもそも僕が「ごきげん」に生きようと意識したのは、まだ学生の頃のことでした。当時ボート部で毎日練習に励んでいた僕の顔を見た母が「頬の脇のところだけ白いわよ」と言うわけです。すると隣にいたボート部の先生が「お前はいつも笑っているから、笑い皺のところだけ日焼けしないんだよ」とウケるのを聞いて、なるほどその通りだな、と納得したんです(笑)。と同時に、幸せな人生を送る戦略として、「どんなときでも、ごきげんを選択しよう」とそのとき心に決めました。
ごきげんだからこそ健康になり、長生きでき、人生もうまくいくのではないか。僕自身、その仮説を実証するようなつもりで努力を重ねてきて迎えた40歳の誕生日パーティーが大きな節目となりました。その日は大勢の楽しい友達が集まってくれたばかりか、大親友に「仕事にも友達にも家庭にも健康にも恵まれて、カズオは幸せだな」と声をかけてもらったんです。でも僕は「それは逆だよ」と答えました。つまり、どんなときも「ごきげん」を選び取ってきたからこそ得られたご褒美なのだと改めて実感したわけです。
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