吉田松陰の名前を聞いて、みなさんはどんな言葉を思い浮かべるだろうか。
「長州」「黒船密航計画」「松下村塾」「高杉晋作」「久坂玄瑞」「伊藤博文」「宮部鼎蔵」「松陰神社」「野山獄」「安政の大獄」…私が個人的に付け加えるなら「篠田三郎」。篠田さんは、大河ドラマ「花神」で吉田松陰を演じた俳優だ。篠田松陰は、勉強熱心で穏やかで笑顔がステキだった。女っ気もなくまじめで一本気な松陰が若くして処刑されてしまう展開に、お子様の私は衝撃を受けた。それから30年近く経って、偶然にもうちの近所の公園で篠田さんが愛犬の散歩をされている姿を目撃。思わず「松陰様!!」と駆け寄りたかったが、私もいいおとなだったので、その衝動はなんとか抑えた。
とにかく断片的にしか松陰について知らなかった私に、本書は史実に基づいた「人間吉田松陰」を立体的に見せてくれた。
まず、驚いたのは、「吉田松陰は決してぽっと出の天才ではない」ということ。天保6年、杉家から6歳で吉田家の養子となった松陰は、実兄の梅太郎や叔父玉木文之進に見込まれ、りっぱな兵学者となるべく勉学勉学また勉学の日々。ある祝日に梅太郎が今日1日は休息しようと言っても「亦一生の内の日なり」と休まなかった。
そんな松陰にも仲間と過ごした若き日々があった。
嘉永3年、長崎に遊学。ここでオランダの汽船に乗ったり、パンやスープも食したり、洋酒も試している。これも意外な事実だった。後年、黒船でアメリカ渡航を志す段階で、松陰は西欧の雰囲気や生活をまったく知らなかったわけではなかったのだ! さらに松陰は、江戸を経て宮部鼎蔵とともに東北にも足をのばす。各地で出会った仲間と酒を酌み交わし、語り合う。まさに青春。しかし、本書には衝撃の事実が。仲間から「仙人」と呼ばれた松陰は、仲間に頼まれた旅館の女中に迫られて…。(顛末は本書で確かめてください)
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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