インタビューほか

信州の自然が育む感動的なおいしさ

「本の話」編集部

『信州てくてくおいしいもの探訪』 (伊藤まさこ 著)

──終盤の「春はすぐそこ、ふきのとう」で伊藤さんは大きなかごを片手にふきのとうを夢中で摘んでいますね。読んでいてうれしいのが、そこでふきのとうペーストの作り方や、それをグリルチキンに添えたりお味噌汁に入れたりというアレンジ法が紹介されていること。ほかにも「諏訪散歩のあとは、かりんのパテを作る」というページがあったりして、伊藤さんの信州での暮らしぶりが伝わってきます。

伊藤  読者の方からいただくお手紙に、私が食材をどのように活用しているのかや、松本の家でどう過ごしているか知りたいというお声があったので、そのあたりは意識しました。

  取材時に聞いた作り方を家で実践したらこうなりましたとか、秋から冬にかけてりんごをいただく機会が多いので、こんな風に家でりんご酢やりんごソテーを作っていますよ、とか。

──本にするにあたり、いくつも追加取材や料理撮影をされているんですね。

伊藤  はい、思い切って全面改稿。そぎ落としていったものもあります。取材直後は発見や驚きが大きな原動力となって執筆していましたが、ここでの生活も四年目となり、食材への理解が深まったりアレンジ方法が増えたり、私自身の「信州像」も熟成されてきました。足掛け三年このテーマと向き合ったおかげで、結果として自分でも自信を持ってお届けできる内容になりました。

 

“大人の社会科見学”のような取材

──『東京てくてく~』『京都てくてく~』との大きな違いはなんでしょう。

伊藤  私の「おいしい」「かわいい」センサーは以前と変わっていないのですが、「これ、おいしいでしょ!」で終わらせずにいるところでしょうか。東京にはおいしいものやかわいいものがギュギュッと集まっていて、京都はどこを切り取っても味わい深い歴史が感じられます。一方で信州のおいしいものの背景を探ってみると、多くの作り手が素材を育む土壌作りから強い思い入れを持って携わっていることがわかるんです。“てくてく”のスタッフと「これは“散歩”じゃなくて“大人の社会科見学”だね」と話していました。

──深く掘り下げられているということですね。

伊藤  さきほどワイナリーの方がぶどう畑の土壌にもこだわっているとお話ししましたが、松本市・奈川にある清水牧場でのチーズ作りでは牛の飼料はもちろん、放牧する草原の状態など、牛がストレスなく過ごせる環境にまで心を配っています。そういうことを見聞きして、牛舎で前日生まれたばかりの赤ちゃん牛まで見せてもらって。大切なことを学ばせてもらった気がします。

信州てくてくおいしいもの探訪
伊藤 まさこ・著

定価:1365円(税込) 発売日:2010年09月15日

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