顔をキャンバスにして似顔絵を描き写真を撮る、南伸坊さんの「本人術」。ありとあらゆる人になりきってきた今、その面白さについて伺いました。
――南さんが30年にわたり続けてこられた本人術ですが、この8年は「オール讀物」の「今月の本人」で毎月いろんな人物として登場し、先日惜しまれながらも完結いたしました。そしていよいよ『本人遺産』として刊行されます。『本人伝説』に続き、笑いすぎて涙がとまらない本になりました。
南 月刊だと、こいつは面白いぞと思っても雑誌が発売されるころには当の本人が話題にものぼらなくなってたりで、タイミングがうまくあわないってのが気になって……。
――事件も話題も次から次へと、昔に比べてあっという間に消費されるようになったからでしょうか。
南 そうですね。1年まとめて振り返ったときに、あれ?この人なんでやらなかったのかな、とかね。
――「本人」はどのように選ばれていたんでしょうか?
南 やっぱり顔ですね。顔が面白い人のほうが事件が面白い。事件として面白くても顔が面白くないと選ばないですけど(笑)。
「よく顔で決めるな」とか言いますけど、やっぱり顔でわかることってあると思うんですよ。そう思っているからずっとこんなことやってるんですけど。たいていの人は、顔でどこか判断してる。「本人遺産」の巻末に収録した東海林さだおさんとの対談で、「なんで似ていると面白いのか」って話になったんです。東海林さんになかなか納得していただけなかったんですけど、今考えると、似ていると面白いっていう現象から入ったからなんです。「顔をみればその人がわかる」という考えが実は大前提としてある。ところがその人じゃない人が、つまりぼくですが、その人になって出てくるわけですよね。それがまず、ヘンなんですね。それでおかしい。その人について見る人自身が持っている考えと、ぼくが作った本人の顔が一致してたり、または齟齬があったり、で一瞬のうちに脳が活性化する。それが「面白い」ってことなんじゃないかなと。最近、自分でもそのへんがわかんなくなっちゃってて、何が面白いんだろう?だったんですけど。
――南さんご自身は一致も齟齬も知った上で「本人」をやっているから、脳が活性化する面白さとは違うんですね。
南 そうですね。似たとか似なかったとかで一喜一憂してるだけで(笑)。
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