──大友は、刑事総務課所属にもかかわらず、捜査一課時代の元上司である福原の指示で、特捜本部に強引に組み入れられるわけですが、なぜ、福原は大友を事件に巻き込むんでしょうか。
堂場 彼の柔軟な能力、カメレオン的能力を評価しているからでしょうね。だから、大友は「二つの顔」ではなくて、いくつもの「別の顔」を持っているとも言えます。
──すると「アナザーフェイス」とは、大友のことですね。
堂場 はい。大友の父親としての顔、刑事としての顔。あと、物事にはだいたい別の顔があって、今回の事件でも、皆が気づかなかったところを大友だけが見抜くという意味をこめています。今回は大仕掛けな事件になったわけですが、今後も、捜査一課の正攻法ではすこし解決しづらいようなへんな事件、デリケートな事件が、彼の元に持ち込まれる。そのたびに、福原にひっぱりだされることになると思います。
──大友は、クレーム対応も被害者家族の対応もまったく無難にこなす、刑事とは思えない当たりの柔らかい人ですね。
堂場 奥さんはいないんですが、今までの私のアプローチであれば、妻の不在がなんらかのトラウマとして物語にかかわってくる。でも、大友はそこは諦めがついている。なにがあってもほぼ変わらないフラットな人物。空気が読めない人間のなかで、状況に応じて変えられる。あと、現在、進行しているシリーズの「警視庁失踪課」は、いわゆるチームものですし、『交錯』のシリーズ(「警視庁追跡捜査係」シリーズ ハルキ文庫)は、バディ(二人組)ものですから、二人の異なるキャラクターを等分に描いて、その関係性に光を当てている。それらとはまた違った、一人で動くけど一匹狼や不良警官ではない、今までにない、刑事らしくない刑事を描いてみたかった。
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