藤子不二雄愛
――書名『少し不思議。』は藤子・F・不二雄が提唱した「SF」の定義ですね。日常の中に飛び込んでくる非日常「すこし・ふしぎ」が「SF」だという。
天久 僕は「ドラえもん」世代なんです。藤子不二雄が創作の原体験なので、一応処女作だしあやかろう、みたいな感じです(笑)。実は『少し不思議。』には「ドラえもん」が出てくるんですよ。何も出さないドラえもんが(笑)。
――えっ。気付きませんでした!
天久 途中から「ネコ爺」っていう可愛らしいホームレスが出てくるんですが、それが僕の中での「ドラえもん」なんです。
――この作品には教養小説的側面もありますね。震災を機に、フワフワしていた辰彦が「ちゃんとする」という「今年の目標」をたてたりします。
天久 僕自身だらしない人間なので震災に遭ってそういうクダラナイ人間が前向きになった、という話にはしたいなと思っていました。野良犬っぽい奴の方が案外こういう時代ではしたたかに生きていくんじゃないかと思うし、そうあって欲しいと思います。
今回のような原発とか、あともっと個人的な問題にしてもそうですけど、世の中これが正しい解決策って実は無いじゃないですか。それを求めた時点で他人に足下見られたりするのがオチだし。結局答えのない問題って個人でなんとかするしかないんじゃないですかね。そこに気づくまでは書きたいけどそれ以上は書けないですね。
――天久さんは原発をどのように考えていますか。
天久 日本古来の「花鳥風月」に加わった新しい風流。「ネオ風流」ですね(笑)。人間の五感ではとらえられないけれども折々の数値に泣いたり怒ったり。極めて日本的だと思いますよ。
――この小説はかなり推敲はされたのですか。
天久 だいぶ削りました。書き上げて文學界に掲載されるまでずいぶんありましたから。5分の1くらい。くだらないエピソード、しつこいところ、ダサいところをガバッと削った。いや、ダサいところは残したか(笑)。これは勉強になりました。あと苦労したのは終わらせ方。僕、自分が小説を読むときあまり最後まで読まないので小説のラストってどう書けばいいのかなと(笑)。面白い小説ほど読んでいるうちにどんどん妄想がふくらんで「あとはもう自分で考えるからいいや」って。でもまた小説、書きたいですね。ていうかなんでもいいんで仕事ください!(笑)
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