インタビューほか

禁教と戦乱に翻弄された女の物語

「オール讀物」編集部

『地上の星』 (村木嵐 著)

禁教と戦乱に翻弄された女の物語

 松本清張賞を受賞したデビュー作『マルガリータ』で、天正遣欧少年使節の葛藤を綴った著者が、天草四郎時貞が登場する直前の信仰の地「天草」を描いた。

「世界から見れば、日本は島国です。その日本の中の“島”である天草に昔から関心がありました。海に囲まれていながら、村上海賊のような強力な水軍が発達したわけでもない不思議な場所であるうえに、大勢のキリスト教信者がいた。まさに信仰の町でした」

 秀吉による天下統一が進むなか、ヴァリニャーノら宣教師が来日し、九州・天草では、キリスト教が浸透していた。ところが、キリスト教の拡大を恐れた秀吉が布教を制限。表立った活動が出来なくなったイエズス会宣教師たちは、日本語=ポルトガル語辞典、いわゆる「日葡(にっぽ)字書」の編纂にまい進する。

 物語の主人公は、日葡字書を作る男のもとで働いた「おせん」と、美しい姫として天草の民に愛された「お京」だ。

「迫害された宣教師たちが“今、できることをする”と取り組んだ日葡字書も尊いですが、西洋との架け橋となるべく編纂を支えた日本人がいた、ということにも驚いたんです。字書には彼らのクレジットもないですが、名もなき奉仕こそが、日本人らしいなと思うんです。

 日葡字書には、“雨に濡れて露恐ろしからず”という言葉が記されています。大難に出あった者は小難を恐れないことの例えですが、当時の人たちは、こんな言葉で自分たちを勇気づけていたんだなぁということも感慨深く感じるんです」

 バテレン追放令が出された後も、「命に替えても字書を守る」というおせん。皆が紡いだ3万2000語が収録された字書を、お京に託そうとする。

 一方のお京は、愛する人の裏切りを知り、幼い頃に宣教師フランシスコ・ザビエルから聞いた言葉を思い出す。

――人とは、地上に降りた星にほかならぬ。人は人を見て“しるべ”とし、歩いて行く――。

 1589年、お京たちの運命が大きく動く。普請手伝いを拒んだために、小西行長、加藤清正連合軍が、天草に迫ってくる。女2人は、誰を愛し、何を守り、どんな生き方を貫くのか。

「地上の星、というタイトルには“人のしるべであるべきという矜持が、人を支えている”という思いを込めました。この後は、デビュー作から書いてきた“信仰”というテーマの答えとして、島原の乱を描きたいと思っています」

村木嵐(むらきらん)

1967年、京都市生まれ。会社勤務を経て、2010年、『マルガリータ』で松本清張賞を受賞し、作家デビュー。著書に『島津の空 帰る雁』『頂上至極』など。

地上の星
村木嵐・著

定価:本体1,600円+税 発売日:2016年09月26日

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オール讀物 2016年11月号

定価:980円(税込) 発売日:2016年10月22日

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