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読書の秋? 食欲の秋? 恋に落ちる秋?<br />この秋に読みたい書店員のおすすめ本

読書の秋? 食欲の秋? 恋に落ちる秋?
この秋に読みたい書店員のおすすめ本

「本の話」編集部

知っているようで知らない書店のことについて、全国各地の書店員さんが顔出しで回答する「10人の書店員に聞く<書店の謎>」。今回は、読書の秋にふさわしい本をご紹介します。

読書の秋を迎えました。秋の夜長に、今一番お勧めの本を教えてください。ミステ リー好きなので、できればミステリー作品をお願いします。(岐阜県 40代 男性)

内田剛(三省堂書店神田神保町本店)

 すでに評価され売れているタイトルで恐縮ですが、今年の江戸川乱歩賞受賞作『闇に香る嘘』(下村敦史/講談社)をおすすめします。重厚なストーリーで衝撃的なラストを堪能できる充実の一冊。主人公がなんと盲目で、それを作品に調和させる力技が凄すぎます。乱歩賞も第60回と還暦を迎えました。過去の受賞作の読み返しや、受賞作家の新作をあわせてぜひお読みください。

 

野坂美帆氏の一番お薦めのノンフィクションの本を教えてください。( 京都府     30代     男性)

野坂美帆(紀伊國屋書店富山店)

『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』 (佐々涼子・著)
早川書房
定価:本体1500円+税
発売日:2014年06月20日

 一番が決められないので、いくつかご紹介いたします。『誕生日を知らない女の子 虐待-- その後の子どもたち』(黒川祥子/集英社)2013年第11回開高健ノンフィクション賞受賞作です。新しい視点で虐待問題が描かれています。『殺人犯はそこにいる- 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件- 』(清水潔/新潮社)著者は取材の過程で冤罪事件として名高い「足利事件」の菅家さんを釈放に導き、更には真犯人を特定していると書きます。事件の真実はなぜ隠されているのか、非常な衝撃作です。『紙つなげ!彼らが本の紙を造っている』(佐々涼子/早川書房)は本が好きな方にはぜひお読みいただきたいです。日本製紙石巻工場の再生物語です。個人的な趣味から申し上げれば、『寄生蟲図鑑 ふしぎな世界の住人たち』(飛鳥新社)や『クモはなぜ糸を作るのか?――糸と進化し続けた四億年』(丸善出版)、『ゴキブリ大全 新装版』(青土社)、『パンダが来た道 人と歩んだ150年』(白水社)などでしょうか。いずれも生物系読み物として素晴らしいと思います。

 

中年以降の大人が希望を持って生きられるような小説と絵本を紹介してほしい。(千葉県    50代    女性)

内田剛(三省堂書店神田神保町本店)

 小説なら伊吹有喜さんの『風待ちのひと』(ポプラ文庫)をぜひ。『ミッドナイト・バス 』(文藝春秋)が直木賞候補となった著者デビュー作です。疲れたとき立ち止まってこの本を読むととても癒された気分になります。日ごろの抱えた悩みもちっぽけに感じて足が踏み出せるのです。
 絵本は一世を風靡した定番ですが『つみきのいえ』(加藤 久仁生・絵 平田研也・文/白泉社)をオススメ。人生に予期せずにおとずれる痛みや哀しみを覆いつくすような、おおらかな愛があふれています。包容力が際立った作品です。

 

気分が落ちているときに、思いっきり笑えてたのしめるような王道のコメディマンガはなんですか?(長野県 20代 男性)

高橋佐和子(山下書店南行徳店)

『毎度!浦安鉄筋家族』(浜岡賢次/秋田書店)。四コマでしたら、当店で売れている、『アホガール』(ヒロユキ /講談社コミックス)。沢山笑ってください☆

 

 長い夜に物思いにふけりがちな季節。秋は(も?)恋の季節です。

キュンキュンするオススメの本を教えてください(^人^) (神奈川県 20代 女性)

野坂美帆(紀伊國屋書店富山店)

 キュンキュン、ということはときめく、ということでしょうか。やはり恋愛小説がよろしいのではないかと思います。小説ならば有川浩さんの『植物図鑑』(幻冬舎文庫)はいかがでしょうか。同じ著者作品で『阪急電車』(幻冬舎文庫)もキュンキュンです。ちょっぴりせつない風味が加わる橋本紡さん、ちょっぴり青春風味が加わる中村航さん、女子目線の恋愛に共感できそうな瀧羽麻子さんの作品もおすすめです。キュンキュンに限らず、小説の世界には色んな恋愛がありますね。お心に沿うものをお選びください。

 

高橋佐和子(山下書店南行徳店)

 有川浩『図書館戦争』シリーズ(角川文庫)。最近キュンとしたのは、成田名璃子『ベンチウォーマーズ』(メディアワークス文庫)、甘酸っぱくて赤面しちゃいました。

 

内田剛(三省堂書店神田神保町本店)

 最近、もっとも胸がキュンとしたのは『グリーン・グリーン』(あさのあつこ/徳間書店)です。『バッテリー』シリーズ(角川文庫)はじめパワフルに新作を出し続ける、あさのあつこさんの新刊は田舎の農林学校の新米教師。その瑞々しい成長ぶりに久しぶりに胸がときめきました。読んでいてじわーっと温かい涙が……知らず知らずに淀んでいたこころが、すっかりと洗われた気がします。まっすぐ生きなきゃ。

【次ページ】食欲の秋に、料理上手になれる本

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  • 『赤毛のアン論』松本侑子・著

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