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本屋さんのおすすめ本はどうやって決まっている?

本屋さんのおすすめ本はどうやって決まっている?

「本の話」編集部

知っているようで知らない書店のことについて、全国各地の書店員さんが顔出しで回答する「10人の書店員に聞く<書店の謎>」。今回は、書店の棚で紹介されるおすすめの本に関する質問にお答えします。

『本屋さんのオススメ』は、どのようにして決まるのでしょうか? 書店によって、テレビで放送されるような全国的に同じものをオススメされている事もあれば、こんな本があるんだ!とワクワクするような初めて見るものを紹介されている場合もあります。(富山県 30代    女)

 ではまず、大阪の町の本屋さんの回答から。隆祥館書店さんはそれほど広いお店ではありませんが、「坪あたりの売上高は大阪で一番」と言われるほど、地元のお客様の心をがっちり掴んでいるお店です。

 

二村知子(隆祥館書店)

 隆祥館書店の場合は、実際に読んでみて「心を掴まれる」ような感動したもの、また、これを読むのと読まないとでは、これからの人生が変わるかもしれないと思った本、また、ビジネス街兼住宅街にあるので中小企業の経営者の方々が、景気の低迷など、何か困難な状況にある場合でも挑戦していける気持ちになれる小説などをお薦めしたりしています。当店は小さな書店なので、お客様との距離が近いということもあり、その方その方に寄り添った本のお薦めができたら……とも感じています。

 一方、東京のおしゃれな街・代官山にある蔦屋書店は先進的なコンセプトのお店として知られています。

 

戸木田直美(代官山蔦屋書店)

 当店では、各ジャンルにコンシェルジュが配置されています。コンシェルジュは、担当ジャンルに精通した知識を持った、いわばそのジャンルのプロの店員です。そのため、経験に裏打ちされた「これ、いいですよ」という提案をお届けしています。お客様のご要望をくわしくお伺いしてぴったりの1冊をオススメすることもできますし、コンシェルジュのチームで、棚全体を選書するということもあります。

 なるほど、遠方からでも本を買いに行きたくなる人気の秘密が分りますね。

 次は、ご質問いただいた方の地元・富山の紀伊國屋書店からも回答をいただいています。

 

野坂美帆(紀伊國屋書店富山店)

 例えば多くの読者に支持されていて、有名なベストセラー作家の新刊であれば、目立つ販売台に置きます。それは、オススメというよりは、お客様にわかりやすく商品展開している、ということです。全国的によく売れているものは、富山であっても関心を持つお客様が多くいらっしゃると判断できます。ですので、目立つ場所に展開します。それとは別に、弊店のお客様にぜひお届けしたいと思う商品や売り場企画もあります。弊店のお客様であればきっと関心を持って見ていただけるだろうと考えたものです。そういったものは、各担当者が自分の売り場の商品の中から見つけ出すもので、選ぶ基準はやはり弊店のお客様にとってどうか、ということだと思います。もしそのワクワクが弊店でのものであれば、大変に嬉しくありがたいことです。

「本屋さんに行っても、何を買ったら良いか分らない」という方は、おすすめの本がどう並べられているかを知ると参考になるかも知れません。東京・大手町の地下鉄改札前にあるお店が質問に答えてくださいました。

 

山本善之(くまざわ書店大手町店)

 当店でのオススメ分布をご案内。
・ベストコーナー
 大手町店では、自店の売上を参考に毎週土曜日に入れ替えています。このコーナーに置いてある商品は、言わば「大手町店を利用しているお客様のオススメ」です。読むべき本を是非ここから見つけて頂きたいです。
・最前面ワゴン
 事前案内(内容)・同著者、ジャンルの前著販売実績・世間の注目度・出版社の期待度・値段・担当の独断などを統合しお客様の求める商品を推理して決定している、より広い意味でのオススメ書籍販売スペースです。当店においてはチェーンで指定があるわけではなく、大手町向きの商品を担当者が選んで置いています。
・既刊棚
 店の役割として個人的な趣味を推すことを求められていないと考えておりますので、殆どの商品は売れ行き・時事性で必要性を判断し並べています。店員の好みで推す本は棚の端にひっそりと存在するか、時期を区切ったフェアで解放するようにしております。

くまざわ書店大手町店は地下鉄大手町駅の都営三田線大手町方面改札口を出て目の前。一日中、お客さんで賑わっています

 どちらのお店も、書店員の個人的な好みではなく、まずお客様ありきの姿勢であるところが、共通していますね。しかし、やっぱり人間ですから好みの本は少しでも多く売れて欲しい。そこで、こんな回答も届いています。

 

内田剛(三省堂書店神田神保町本店)

 映像化や受賞作や話題作はだまっていても売れますので、書店のいちばんいい場所でおすすめをします。その隣にこれは売りたい、という個人的ひいき本を並べて置きます。いっしょに売れればしめたものですが、世の中そんなに甘くは……。

 お店の棚を巡りながら、こうした書店員さんの思いが感じられるようになると、書店巡りがもっと楽しくなることでしょう。

関連情報を本の話WEBのTwitterアカウント(@hon_web)でつぶやいています。ハッシュタグ:#書店の謎

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