
青春を剣道にかける女子、あの『武士道』シリーズの「強さは力」剛の香織と「お気楽不動心」柔の早苗が帰ってきました! 高校卒業から6年、それぞれ道を歩き出した2人を待ち受けるのは――。最新作の刊行を記念して、3名の書店員の方に、このシリーズの魅力について熱く語っていただきました。
彼女たちもちゃんと成長していた
内田 久しぶりだな、いつ以来かなっていう懐かしさがあります。
白井 結婚式のシーンからでしたよね。
勝間 ビックリしましたよね。
白井 ビックリ。
内田 えっ、誰と誰の、じゃないけど。
勝間 まさか香織が?って一瞬思うけど。

イラスト:長崎訓子
白井 そうそう。そんなわけないよね(笑)。
内田 それはないよね(笑)。
勝間 まずないな、と思って(笑)。
内田 でも、その辺の懐かしさは、久しぶりの中学時代の同窓会に行った感じじゃないけれども、そういう、「ああ、久しぶり」っていう嬉しさもありますよね。『武士道エイティーン』が出たのが二〇〇九年ということは、もう……六年。そのころ、どこの店でこのシリーズを売っていたっけというくらい。何年かたってる自分もいて、この六年を懐かしく思い出したりしました。
勝間 「彼女たちもちゃんと成長してるんだ」っていうのはありましたね。
内田 そうそう。彼女たちの成長を見て、自分はしているのかしてないのかって問いかけてみたり。あんまり変わってないな、とかね。
白井 学生じゃない彼女たちのどんな物語になるのかなって。
内田 『武士道シックスティーン』、出会いでしたよね。
勝間 『武士道シックスティーン』の刊行の時に初めて僕、帯にコメントを使われたんです。その時に書いたんですけど、実は中学生時代剣道を少しだけかじっていて、すごくそれも思い出しました。当時、香織と早苗みたいな関係の人が自分にいれば、部活を続けていたかどうか分からないですけど、もうちょっと楽しかったかなって。学生時代に彼女たちのような出会いがあればなっていうのはすごく思いましたね。
白井 私は、剣道は全くやったことがなくて、試合で見たことぐらいしかなかったんです。スポーツ自体は好きなんですけど、剣道をやったことないのにすごい面白くて入り込めてしまったことに驚きました。あっという間に読んだ覚えがあります。

三省堂書店営業企画室 内田剛さん
内田 皆さん剣道との関わりを話していらっしゃいますけど、高校の時、授業で柔道か剣道か選ばされて、柔道は生身だけど、何となく剣道は防具があるからごまかせるんじゃないか、みたいなそんな及び腰な感じで始めたんです。でも、週一回のその時間っていうのがやっぱり背筋がピッとするんですよね。あの防具をつけて蹲踞して、礼から始め礼に終わる。剣道の一時間は自分の中でも凛とした空気が流れていたような気がします。大人になってもそういう記憶とか思いがあって、それが『武士道』シリーズに重なるかなと。僕もいろんなジャンルを読ませてもらっていますけど、なんか読後がいいのはないかなって常に探しているところはあったかもしれません。その中で、青春ものの、特にスポーツものっていうのは、外さずに結構読後気持ち良くしてくれるんじゃないかなっていうような思い入れがありました。ちょうど自分と同世代の作家さんなので応援したいし、ジャンルとしても外さない、面白そうだっていう興味のもとに手にした記憶があります。
著者が辿り着いた境地
白井 スポーツ小説っていいですよね。自分がやってないのにスカッとする。何なんでしょうね。

イラスト:長崎訓子
内田 そうそう。世界も広がるっていうか。知らない、勝負の世界を知ることができるっていう。
白井 自分ができなかったことを。優勝できなかったとか、そういうことも代わりにしてくれる。
勝間 そうですね。ライバルも代わりに見つけてくれて。
白井 倒してくれたりとか。
内田 その達成感を追体験できる。
白井 だから気持ちがいいんですね。
内田 気持ちいいですよね。
白井 誉田さんが青春小説を書くって当時は意外性がありましたよね。
内田 大いにありました。
勝間 「これ、人死なんって聞いたけど、ほんまかな」って、ずっと最後まで疑心暗鬼で読んでました。
白井 ご本人も言ってますもんね。「人が死なない物語って初めて」って。
勝間 でも、ちょっと疑心暗鬼でした。途中で何か事件起きるんちゃうかな、とか。
内田 そうそうそう。


勝間 『シックスティーン』で香織が階段から落ちたじゃないですか。あれとか。
白井 そうですね。今回、師匠も危なかったですしね。
内田 そう。ちょっとドキドキしましたけどね。絶対死なないと信じてましたけど。
勝間 香織のお父さんも『セブンティーン』で事故にあって。
内田 危ないんですけどね。誉田さんが『ケモノの城』とか『ジウ』とか他の作品でたくさんの人を殺してたどり着いた境地だと思うんですよ。
勝間 ああ、確かに。
読んで気持ちがいいものを勧めたい
内田 人が死なないで感動させるっていうのはすごい。今、店頭で売れているものでも、泣ける本とかが結構あって、涙腺崩壊しっぱなしなんですけど、大抵誰かが死んだり病気になったりっていう、ネガティブな涙なんですよね。やっぱり読んで気持ちがいいものを勧めたいよねという思いが、僕ら書店の中にもあって。そういう意味では、本当にこの『武士道』のシリーズっていうのは、僕らが読んでも楽しいし、気持ち良くなれるし、お客さんにすごくお勧めしやすいっていうのはあります。
白井 すごい好きなんですよね、香織。般若の竹刀袋とか。
勝間 香織、最初、すごくおかしいですよね。防具も何もつけていない早苗に襲い掛かったりして、よう二人は友達になれたな、と思いましたね。『シックスティーン』のカバーの香織もすげえヤンチャやなって。

紀伊國屋書店新宿本店 白井恵美子さん
白井 私は、なんか媚びてない感じというか。
内田 素直な感じ?
白井 ほんとに女子っぽくなくて、剣道に夢中で。
内田 一途ですよね。
白井 そうですね。とことん突き詰めていく感じが、私は好感が持てたんですよね。お昼ごはんに握り飯と決めていたりとか。
勝間 特に強さを求めるような感じがありましたね。
白井 言葉もどんどん荒っぽくなっていって。
内田 その辺の変化が読んでいても感じられますね。
白井 恋愛とかがあんまりなくて、『ジェネレーション』ではいろいろあったけど、でも、言い寄られても女を出すことなく自分で行くっていうところがいいなって思いました。

MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店 勝間準さん
内田 すごく男らしいところを僕は感じたけど。女性が読んでいてどうなんですかね。女性同士っていうのは。男同士でも全然また違うでしょう。
勝間 男同士やとわりとBL臭するんですけど、女性同士は全くそういうのないですよね。
内田 いま、女性が強くなって、男性がいい意味で言うと優しくなってるのはあるかもしれない。それがこの『武士道』シリーズにも。ない?
勝間 あるかも。
内田 時代にフィットしているかもしれないですよ。強い女性っていうか、女性同士の関係が。
勝間 早苗の懐が深いんですよね。
内田 持ってるものが深い。
武士道シックスティーン
発売日:2010年02月20日
-
『22世紀の資本主義』成田悠輔・著
ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。
応募期間 2025/02/20~2025/02/27 賞品 『22世紀の資本主義』成田悠輔・著 5名様 ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。