- 2013.03.19
- 書評
サッカー関係者だけでなく、
ビジネスリーダーに最適の書
文:中西 哲生 (スポーツ・ジャーナリスト)
『見て、話して、ともに戦え U-23世代をどう育てれば勝利に導けるか』 (関塚 隆 著)
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#趣味・実用
昨夏のロンドンオリンピックで、男子サッカーチームが、緒戦のスペイン戦に勝利しベスト4の成績を収めたことは、私の予想を大きく上回るもので、その成長振りには驚かされた。
1989年以降生まれの、当時23歳以下の選手で構成されたこのチームは、メディアで「雑草軍団」と言われていた。彼らが、2009年と11年に開かれたU-20(20歳以下)世界大会の出場を逃していることがその理由だ。
『見て、話して、ともに戦え U-23世代をどう育てれば勝利に導けるか』には、このチームを率いた関塚隆監督のリーダー論、組織論が書かれている。なぜ、その雑草軍団がスペイン戦に勝てたのか、それは本書を読めば理解できる。
早稲田大学から本田技研に就職した関塚さんが、文武両道であることは兼ねてよりよく知っていたが、この本には、関塚さんの論理的思考があまねく披露されている。
U-23世代といえば社会では新人社員にあてはまる。“若手”の見極め方、接し方、育て方、そして組織論が、33のポイントにまとめられている。
中でも私が共感を覚えたのは、「消極派に目を向ける」というポイントである。上司に対する部下の忠誠心の内訳で「2対6対2」という比率が一般的にあることは私も聞いたことがある。積極派、中間層、消極派がその内訳だ。選手から監督になった場合、陥りやすいのが、試合に出ていない選手の気持ちが分からないという状況だ。その気持ちが分からないと、組織をたとえまとめることができても、まとめ上げることはできない。関塚さんは、鹿島アントラーズでの長いコーチ時代に、試合に出ていない選手の練習を見て、彼らの不平不満も聞いてきたことと思う。
「消極派」である彼らに自分もこのチームの一員なんだと意識させることが重要だと関塚さんは分かっている。
そしてそのためには、彼らの小さな変化を見逃さず、こちらから声をかけることが大切だと、「自分からアプローチする」というポイントに書かれている。私も今はラジオのパーソナリティという立場の仕事場で、やはり同じことを意識している。相手を変えようと思ったら自分が何かを差し出さないといけない。奥さんの機嫌が悪い? そんなときは自分から笑顔で接することを続ければ、変わってくるはずだ。