- 2013.08.13
- 書評
どれが中国産なのか
ひと目でわかるガイドブック
文:徳山 大樹 (『週刊文春』特別取材班キャップ)
『中国食品を見破れ スーパー・外食メニュー徹底ガイド』 (『週刊文春』特別取材班 編)
ジャンル :
#ノンフィクション
本書は、『週刊文春』3月28日号から8回にわたって連載した「中国食品告発キャンペーン」をもとに、書籍化したものですが、まずは週刊誌で企画をスタートしたきっかけから紹介しましょう。当時はPM2.5など中国での大気汚染が問題となっており、「環境が悪化している土地で作られた食品の汚染について調べてほしい」という編集長の言葉が始まりでした。
取材してみると、厚生労働省が輸入食品に行なっている検査で、残留農薬や大腸菌群の検出など、食品衛生法に違反した件数は、中国が1位。ここから件数の多い約60品目をピックアップして記事にしたのが第1回でした。当初は3回ほど連載する予定でしたが、読者アンケートで1位を獲得し続けたため、編集長から「まだまだ続けろ」と厳命が下されたのです。
中国の農村に記者を派遣して現地取材をしたところ、水質と土壌の汚染はひどいものでした。記者が腐臭の漂う井戸を調べていたところ、突然、住民たちから喚き立てられました。取材への抗議かと思いきや、記者を役所の検査員と勘違いして、「我々はこんなひどい質の水で生活せざるを得ないんだ」と必死の形相で訴えていたのです。彼らがコップに汲んでみせた水は、濁りきっていたそうです。
土壌からは、世界的に使用が禁止されているBHCなど有機塩素系の農薬や、カドミウムなどの重金属類が検出されています。中国でも販売が禁止されているはずの農薬(殺虫剤など)が今も売られ、農民たちは説明書きなど読まずに使用しているのです。
知人や取材先から伝えられる記事に対する感想で、意外に多かったのが、「これでは食べられるものがなくなってしまう」というものでした。しかし、取材班が連載の目的として考えていたのは、いたずらに中国食品の危険性を煽ることではなく、何が中国産なのかを知ってほしいということでした。知った上で、何を食べるのか自分自身で選択するべきだと思うからです。
中国食品の輸入量が急増したのは、1990年代終りから2000年代にかけて。つまりデフレ経済のまっただ中です。消費者は安くなければ購入しなくなり、企業はコストを下げるために中国へ進出しました。たとえば各スーパーが力を入れる割安のプライベートブランド商品は、まさに消費者のニーズに応えるためのもの。当然、中国食品が多く使われています。
安いものにはワケがある――ということなのですが、値段とリスクを天秤にかけて判断すべきなのです。日本の食料自給率は約39%、中国から輸入している食料は年間約400万トン。我々の食生活は、いまや中国なしには成り立たないのですから。
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