──世界23か国、800か所以上のお湯を巡って温泉の素晴らしさを伝えてこられた山崎さんは、国土交通省から「YOKOSO! JAPAN大使」にも任命され、テレビやラジオでも活躍されています。これまでも様々な著作がありますが、新書や「ラバウルの温泉」についてなど、割とハードな作品をお書きになる印象がありました。今回は全国の温泉のガイド本、しかも「パワースポット温泉のガイド本」という、山崎さんにとって新しい分野の本ではないでしょうか。
山崎 パワースポットという横文字が加わっていることで、ひょっとしたらそう感じられるのかもしれませんね。でも実は1300年前の書物『出雲国風土記』には既に、「老いも若きも男も女も楽しく集って、温泉に一度洗えば美しくなり、再び入れば万病に効いたので、神の湯と伝えられている」という風に書かれています。つまり、「温泉こそ、日本人にとっての、元祖・パワースポット」だったんですよ。
──日本人は温泉を好きな人が多いですが、理屈ではなく、DNAに組み込まれていたということなんですね(笑)。
山崎 そうなんです。わたし自身もこの12年の間、温泉を紹介することを仕事にしてきて、心や体が弱っていたときに沢山の力を温泉からもらってきたなぁと、つくづく感じています。温泉という言葉は、お湯のことだけでなく、その土地ならではの大自然や土地に根付いた食べ物を口にすること、出会う人々など、「温泉地全体」のことを指すような懐の深い言葉です。今は温泉というと「享楽」としての意味合いが強く、もちろんそういう意味の温泉の役割でも十分なのですが、そこから一歩進んで、さらなる温泉の魅力を多くの人に伝えられる本が作りたい、と思っていました。日本には大昔から「湯治」という、農閑期に温泉地で骨休めをして力を蓄えて日常に戻るという素晴らしいシステムがありましたしね。
──そもそも「パワースポット」という言葉が市民権を得てからしばらく経って、雑誌などでも盛んにパワースポット特集が組まれるようになりましたが、神社や大自然などから力を得るという趣旨の特集ばかりだったように思います。そこに「温泉自体がパワースポットである」という概念がプラスされたことは、改めて、画期的なことだと思いました。
山崎 いくら温泉の奥深さを伝えたいからと、何の前触れもなく『風土記』が云々、神の湯が云々と言ったって、「いかめしい本だな」と思われて、手にとっていただくのは難しいだろうなと悶々と考えていました。そういうときに、パワースポットという市場が成熟してきて「今だ!」と。
──それで、温泉=パワースポット、さらにそんな温泉(パワースポット)の中でも、特に何らかの由縁があって土地から強い力をもらえる温泉を「パワースポット温泉」として紹介することにしたのですね。つまり、ここに登場する温泉地は、キングオブパワースポット、ということですね(笑)。
山崎 そう言われると責任重大ですが、でも、そうです! 800か所から選びに選んだ、とっておきの32か所です。
──坂本龍馬とお龍(りょう)さんが日本初の新婚旅行の地として訪ねた霧島温泉や湯畑で知られる草津温泉などの有名どころから、トロッコ列車でしか行けない黒薙(くろなぎ)温泉や奇跡のお湯が足元から湧く奥津温泉など、興味深いラインナップですね。ちなみに毎日パソコンに向かう者としては、長年のコリが一発でとれるという、120センチもの深さがあって湯船に立って入る鉛(なまり)温泉に興味津々です(笑)。
山崎 さらにそこには、「恋愛相談の神」と呼ばれるかなりのご高齢の女性が売店の番をしていらして、全国から恋愛相談にやってくる人々が後を絶たないんですよ。「アドバイスに沿って行動したら恋がうまくいきました、ありがとうございます!」というお礼状が日々舞い込んでくるというような。
──それは行って確かめなくては……!(笑)。そう言えば、この本はただ単に「パワースポット温泉」というだけでなく、そこに「恋に効く」という要素が加わったことにより、本に流れるストーリーがとても活きています。「失恋で傷ついた心を癒すためにひとりでいく温泉」、「傷が癒えて友達とにぎやかに楽しみながら、心身ともに美しくなる温泉」、そして「成就したふたりが、愛を深めるために行く温泉」と3章立てになっていますね。でも実はこれって「恋」だけじゃなくて、仕事で疲れた人にも当てはまりますね!?
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