文春文庫から高橋由太さんの書き下ろし時代小説『猫は仕事人』が11月に刊行された。同シリーズは以降、来年3月、7月と続編が刊行される予定。高橋さんは、主に妖怪の活躍するライト感覚の時代小説で若い読者に人気のある作家。ところが今回の作品では、主人公は化け猫なのに、妖怪ではないという。その理由とは?
『猫は仕事人』の主人公は、化け猫のまるです。
舞台は幕末で不穏な時代になりつつある本所深川。
化け猫まるはいっとき、人知れず恨みを晴らす闇の〈仕事人〉稼業に手を染めていましたが、それを辞めて花を愛でたり三味線を聴いたり、化け猫にあるまじき、飼い猫らしい生き方を選びます。ところがそこに……というお話です。
主人公のまるは三毛猫のオスです。なんで三毛猫か理由を正直にいえば、近所にいた猫が三毛猫だったからなのですが、三毛猫は遺伝の関係上、ほとんどがメスで、オスというのはとても珍しい。3万匹に1匹ぐらいだといわれています。飼主の佐々木平四郎は同心を隠居したおじいさん。江戸の呑気なお年寄りの飼い猫っていうイメージにも、三毛猫はぴったりなんじゃないかなと。
作家になる前は、塾の経営者をしたり会社員をしたりしていましたが、縁あって時代小説を書くようになりました。時代小説は大好きで、池波正太郎さんや藤沢周平さんなどよく読んでいました。
それだけに、綺羅星のごとく先輩方がひしめきあっている時代小説の世界は、とても新人が入れる余地があるように思えませんでした。
そのなかで、作家として何か新しい面でもと思い、これだと思ったのが「妖怪」でした。世代的に水木しげるさんの『ゲゲゲの鬼太郎』などに親しんできたこともあり、妖怪の登場する小説を、ごく自然に書き進めることができました。
女性向きのライトな時代小説の人気が高まってきたのも、私にとって追い風となりました。デビュー作となった「オサキ」のシリーズ(宝島社文庫)はじめ、「ぽんぽこ」シリーズ(角川文庫)、「もののけ、ぞろり」シリーズ(新潮文庫)など、これまで多くの妖怪のいる時代小説のシリーズを書いています。
妖怪もの以外も書いてみたいと思っていたところに文春文庫さんから声がかかり、書いたのが、今回の作品でした。
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