- 2015.06.24
- コラム・エッセイ
松本清張賞受賞記念エッセイ 夢を叶える力をもらった。
額賀 澪 (作家)
『屋上のウィンドノーツ』 (額賀 澪 著)
出典 : #オール讀物
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
卒業して丸二年。仕事柄、たくさんの大学を訪ねます。面白い先生がいる大学、学生がもの凄く元気で雰囲気のいい大学、キャンパスが飛びきり綺麗な大学、ユニークな取り組みをたくさんやっている大学。いい大学が、世の中にはたくさんあるということを知りました。ここに通えば、英語が話せるようになったかもしれない。手に職をつけられるような資格を取得できたかもしれない。そう思える大学だってありましたが、日藝に行かなかったら私は、松本清張賞は到底獲れなかったであろうと思うのです。この受賞エッセイの中では語りきれないくらいの多くの人に助けられながら、勉強させて貰いながら、なんとか受賞にまで至ることができました。
仕事で大学の広報物や高校生向けの進学情報誌を制作していると、高校の先生を取材する機会が多々あります。昨年の夏にとある都立高校の進路指導担当の先生を取材した際、「大学選びにおいて、その大学で『同じ志を持った仲間を得られるかどうか』が大切だ」というお話を伺いました。そういった意味で、私にとって日藝は良い場所でした。松本清張賞受賞の一報を聞いた瞬間に、「おめでとう」という言葉と一緒に、「俺も頑張る」と言ってくれる友人が周りにたくさんいることが、非常に嬉しく、心強く思えました。
こうやって大学生活をいろいろと思い返してみると、日藝は、小説を書きたいという甘ったるい熱意だけを持って田舎を出てきた小娘に、自分の食い扶持を稼ぎながら夢を追いかけるだけの力を与えてくれたように思います。そして「夢を追いかける力」を、卒業から丸二年を経て「夢を叶える力」に昇華させられたことを、私は非常に嬉しく思っております。これから作家として生きていく中で、嬉しいとき悲しいとき苦しいとき悔しいとき、あらゆる場面で、何度も何度も日藝での時間を思い出す気がします。
改めまして、皆様、お初にお目にかかります。額賀澪といいます。ガクガでなく、ヌカガです。ミホでもミヨでもなく、ミオです。
高校入学のとき、父から「お前はたいした取り柄もないんだから、挨拶くらい大きな声でしろ」と言われた記憶があるので、自分の名前はちゃんと口にしていこうと思います。
多くの人が松本清張賞という名前から感じるイメージと、「ウインドノーツ」は毛色が違うかと思います。作者である私自身、それは重々承知しております。受賞は、私に作家としてスタートする切符を与えてくれたのと同時に、重たい宿題を背負わせたのだと思います。この宿題を長い時間をかけて、こなしていく必要があるようです。
賞の面汚しにならないよう、血反吐を吐きながらでも、地べたを いつくばってでも、とにかくこの世界に食らいついていけるよう、全力を尽くす所存です。
そういえば、受賞の電話をいただいたとき、大学の卒業式のことを思い出しました。式の後の謝恩会で、同じゼミのBさんに「サインをちょうだい」と言われて、私は彼女の手帳に初めてサインをしました。あのサインをゴミにせずに済んで、本当によかった。
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