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本誌だけが知っている 阿川佐和子「聞く力」オフレコメモ

本誌だけが知っている 阿川佐和子「聞く力」オフレコメモ

文:「週刊文春」編集部

出典 : #週刊文春
ジャンル : #ノンフィクション

あ、聞いちゃいけなかった?

 現役引退して間もない清原和博(09年7月2日号)は、巨人のある人物からクビを言い渡された時の様子を、悔しさ一杯に語った。巨人側のあまりの酷い仕打ちに、阿川さんも思わず、

「それって誰? あ、聞いちゃいけなかった?」

 すると清原は、「声を大にして言います」と顔を机の上のICレコーダーに近づけて、「キ・ヨ・タ・ケ!」と繰り返した。

「清原さんは自分のサインバットをプレゼントしたり、桑田真澄への思いを赤裸々に語ったりと、完全に阿川さんに心を許していましたね」(9代目担当)

小栗旬(09年9月24日号)は、自分の経歴や演技に対する思いを語ったが、本人が一番したい話は、撮り終えたばかりの自身初監督映画について。だが、まだ出せない情報なのか、関係者が「それはダメ」「これもまだダメ」と横槍を入れてきた。すると小栗は、「こうやって止められちゃうんですよね。大人の事情ってやつですよ」と拗ねてしまい、室内は一気に重たい雰囲気に。

「阿川さんが機転を利かせて、なんとか方向転換することが出来ました。機嫌が直ってきたら、今度はその後結婚することになる山田優について、『あいつは、本当にいい女なんですよ』なんて話し始める。事務所の人は、本当にヒヤヒヤしていたと思いますよ」(同前)

 対談は通常、静かな部屋でコーヒーでも飲みながら、といった形で行われることが多いが、ときにはかなり変則的な場所でやることも。

 落語家・立川談春の回(08年9月18日号)では、談春がなかなか時間がとれず、独演会を聞きに行ってのち、夕食を一緒に摂りながらの対談となった。

「食べながらの対談ではなかなか話が終わらず、お店が閉店。そこで、談春さん行きつけのバーへタクシーで移動。車中でも対談が続き、バーでも1時間以上対談が続きました。どんな場所でも粘り強く聞き続ける阿川さんの姿勢に脱帽でしたね」(8代目担当)

 立川談春氏が、そのときをこう振り返る。

「僕は一生懸命喋ろうとして、肩に力が入っていた状態でした。きっとやりづらかったはずです。でも阿川さんは、『好きなだけ、あなたの流れで喋ってください』と。愛を感じましたね」

 一方、もともと話すのが苦手だったり、機嫌が悪いのか、なかなか話してくれない対談相手もいる。

 クレイジーケンバンドの横山剣(09年9月3日号)は、テレビなどで見せる顔とは違い、実はとってもシャイなタイプ。普段はボソボソと話すだけだという。阿川さんは、クレイジーケンバンドを知らなかったが、資料として渡されたCDを聞いて、歌詞を覚えてしまうほどの大ファンに。対談当日は、自前で横山さんと同じような帽子とサングラスを用意してきた。

「それを被って、『どうも~』なんていいながら剣さんの待つ部屋に入っていったんです。それで剣さんはすっかり心を開いて、最初から軽やかに話してくれました」(前出・9代目担当)

【次ページ】 椅子の上で転げて『ゴメンナサイ~』

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