
- 2018.02.26
- 書評
同時代を生きる現役作家の作品を追いかける最大の愉しみとは?
文:重松 清 (作家)
『ナイルパーチの女子会』(柚木麻子 著)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
ともに女子校出身、三十代の小説家と四十代のコラムニストが語り合っている。小説家は柚木麻子さん、コラムニストはジェーン・スーさん。先輩と後輩の「女子会」という趣である。
舞台は雑誌『ダ・ヴィンチ』二〇一五年十二月号――〈いま、一番女性の支持を集める作家〉として柚木さんの特集が組まれ、その目玉企画の一つがジェーンさんとのロング対談だったのだ。
話が佳境に差しかかった頃、柚木さんは「女子校って偏見持たれること多くないですか?」と訊いた。「ヒエラルキーがあるんだろうとか、お嬢様なんでしょう? とか」
同年の講談社エッセイ賞を受賞した『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』そのままに、ジェーンさんの回答は歯切れが良い。
「そういうこと言ってる人とわかり合えなくても、全然問題ないと思います」
柚木さんも、我が意を得たりと「そっか。わかり合えなくてもいいって大事ですよね」と賛意を示す。
続けてジェーンさんが曰く。「そこに絶望はないので。一瞬、胸に冷たい風が吹かなくはないけど、その人とわかり合う苦労を考えたら……」
それを受けて、柚木さんはこんな一言を返した。
「わかり合わなきゃ、共感できなきゃということから失うものって大きいですもんね」
この言葉をご紹介した時点で、拙稿──『ナイルパーチの女子会』の読書ガイドの任は、半ば以上果たしたことになるだろう。
対談の数ヶ月前、二〇一五年三月に柚木さんが上梓した本作は、まさに「わかり合わなきゃ、共感できなきゃということから失うもの」の大きさについて描かれた長編小説だったのではないか。
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